君と白いひかり ページ26
すぅ、と胸から毒気が消えていくのが分かる。しかしそれと同時にどんどん、するするとAの身体に毒が取り込まれていく。
「Aっ、何して…!」
どんどん放出されていた黒い毒が集まって、Aの身体に吸収されていく様子に、俺は真の意味で絶望を覚えた。
「たま、き、わた、し…」
全ての毒が身体に吸収され、Aは静かに目を瞑って力を失った。
「…A?A!A!
あぁあ、嘘だ、嘘だ、起きてくれ…ッ!」
だらりと人形のようになったAを支えて、無我夢中で名前を呼び、身体を揺さぶる。
──────しかし、Aは返事をしない。ハッとして胸に耳を当てると、温かな鼓動がしない。
「────────────ッァアァああ」
骨の髄からマグマが逆流してくるかのように頭が熱くなって、胸が押し潰される。
苦しい、息が出来ない。
必死で呼吸をしようとするのに、激しい憤怒と絶望がそうさせてはくれない。
Aを強く強く抱き締めながらなんとか意識を保って涙に噎せていると──────。
Aの身体に浮かんでいた黒い紋様が徐々に消え、元の滑らかな肌が姿を現していく。
思わず涙を止めてその光景を眺めていると、ゆっくりと顔の紋様まで消え、そして冷たくなった体温が徐々に温かさを取り戻していく。
「A──────?」
そう俺が名前を呼んで頬を包んだ途端、パンと弾ける音がしてAから白く輝く光の粒が放出された。その光の粒は空に舞い上がり、するりと俺の身体の中に入っていった。
瞬間、完全に毒の苦しみと胸の中の絶望感が消えさり、俺の心臓は穏やかな鼓動を再開する。
次々にその白い光は人々の身体に取り込まれ、皆元の顔色を取り戻していた。
そんな光景を半信半疑で見詰めていると、不意に掌に振動を感じる。振り向けば、そこには──────桜色の瞳に涙を浮かべながら微笑むAの姿があった。
「たまき」
色を取り戻した桃色の唇が名前を紡いだ途端、俺の中で何かが弾けた。
「A、A…っ!」
「たまき、ありがとう、ごめんね…っ」
Aの生を確かめるようにこの腕に抱き締めて、何度も何度も名前を呼ぶ。
そんな俺にAは泣き笑いを浮かべながら、何度も何度も返事をしてくれた。
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alto(プロフ) - 素晴らしい作品でした!上手く表現出来ないのですが、とっても感動しました…!心が暖かくなりました。出てくるキャラがみんないい人過ぎて…すみません、言葉が纏まらないほど興奮してます!これからも応援してます! (2020年9月12日 22時) (レス) id: 22bf36de90 (このIDを非表示/違反報告)
星空_kanata_(プロフ) - 初コメです!この小説大好きで既に3回程読み直してます。天喰くんが推しなのですが初見の時は大号泣でした!他の小説も同じ作者さんとは気づいてなかったのですが、読みました!とても面白かったです!時間があれば、また天喰くんの話書いてくれたらな、と思います! (2020年8月30日 1時) (レス) id: c2e895435f (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃奈瑠璃 - これほどまで感動した小説ありません!いい小説です!もう言葉に言い表せないくらい! (2020年7月25日 14時) (レス) id: ce4d25fc12 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - シュラスさん» コメント遅くなって大変申し訳ございません!気づきませんでした…!ミリオも大活躍でしたよね…!段々と天喰くんのお陰で強くなれた彼女ちゃんです…!感動して頂けて嬉しいです! (2020年4月2日 11時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 藍煙(元もも)さん» コメント大変遅くなってごめんなさい…!気づきませんでした…。ありがとうございます!最後まで読んでくださってもう感激です…!本当ですか!?なんだかとっても嬉しいです!執筆頑張ってください! (2020年4月2日 11時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あろま | 作成日時:2019年5月7日 17時