その素顔、俺に見せて【宮治】

イケメンさん ページ5

「ねぇ、駅前のおにぎり屋さん知っとる？えらいイケメンが店長さんなんやって」


栄えた街の中、女子高生が友人の耳元に顔を寄せて、まるで秘密の話のように囁いた。

「えっ、知らん！行きたい！」
「うちも行ったことないんやけどね、友達が行ったらしいねん」

浮き足立って進んでいくと、噂のお店にたどり着いた。駅から徒歩3分の、交差点の近くに構える小さな店舗は【おにぎり宮】と書かれた暖簾の掛かる、和の作りのお店だった。外壁をところどころ覆う竹の装飾が目を惹くお洒落な造りに、女子高生たちの心は踊る。

「こんにちはー」と暖簾を手で退けながら戸を開けると、目の前に現れたのはおにぎりがいくつも並んだケース。様々な種類のおにぎりが並ぶ光景に「わぁ」と声を上げる少女たちの腹の虫がほんの少し鳴った。


「お、こんちは。いらっしゃいませー」


戸の開閉音に反応して、奥の厨房から暖簾を分けて男性がやってくる。おっとりとした微笑みを浮かべた背の高い男性────────優しげな銀色の瞳に、二人の心臓はドキリと跳ねた。

「今なら全種類あるからゆっくり決めてな」と出来たてのおにぎりを並べる男性は、れっきとしたイケメン。なかなか普段では見られない程顔が整っている。


「えっ、めっちゃイケメンやん！」
「この人や、この人！」


おにぎりに釘付けになっていたにも関わらず、噂のイケメン店長にすっかり目を奪われた二人が小声でそんな事を話していると後ろの戸がガラリと開いておばちゃんが入ってきた。

「おさむちゃん、来たで〜」
「おー、加藤のおばちゃん。いらっしゃい」

笑顔を浮かべたおばちゃんに対して親しげに笑う店長はどうやら「おさむ」と言うらしい。名前知れた、なんてムフフといい気分になっていた二人の横におばちゃんがやってくる。


「あれま、新しいおにぎりやぁ」


その目線の先には【鶏肉と葱の焼き鳥風おにぎり】というおにぎりが。想像しただけで美味しそうなおにぎりに、二人の目はまたもおにぎりに移動する。



「あー、これな、俺の彼女が考えてくれたん。今日から発売の新作やで」
「あらまぁ、彼女ちゃんがねぇ。いつもおさむちゃん助かっとるねぇ」
「ホンマやで。色々助けてもろてるわ」



「えっ、おさむくん彼女おったん！？」と、男性の声が店内に響き渡る。衝撃で固まってしまう女子高生の心をまさに代弁したその台詞は、カウンターでおにぎりをモシャモシャと食べていたサラリーマンから飛んできたようだ。

その実、ピュアである→←半分と半分を合わせたら

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