半分と半分を合わせたら ページ4
ぎゅ、と小さな手が俺の制服を掴むのにすら、肩が跳ねてまう。Aちゃんは何も言わんで、俯いとるから長い髪の毛で顔が見えん。それすら不安でしゃあない。人を好きになるんも、告白するんも、初めてやから。
(なんて言われんやろ。振られてまうんかな)
Aちゃんが俺の事好きになってくれとる確信なんか一つもあらへんのに、告白してしもうた。人って不思議や。なんで成功するか分からんことやってまうんやろ。
そんなん、理由は一個だけ。我慢出来へんから。もう、好きで好きでしゃあなくて、伝えずにはいられへんかったから。
「…き、っ」
突然、空気が震えて掠れ声が辺りに響いた。まだ残る喧騒の中でも、言葉にならない呟きは不思議なほど耳に届く。
「なに？」なんて聞き返せへん。やって、怖いもん。ただの友達や言われてしもたら、これから気まずくて堪らんし。
そない事を考えながら息を潜めていると、Aちゃんが顔を上げた。震える唇を動かして、目にいっぱい涙溜めて。
「わたしも、おさむくんが、好き」
────────その途端、呼吸が止まった。世界から音が消える。視界に、肩を震わせて泣くAちゃんしか見えんくなる。
「…もっかい、言うて？」
自然と手が伸びて、Aちゃんの肩掴んどった。涙を手の甲で拭いながら「すき」と紡ぐ今この瞬間を、今までなんども想像しては苦しゅうなった。
「治くんといると、安心するの。自然とね、肩の力が抜ける。一緒にいると、楽しくて仕方なくて、いつの間にか笑ってる。優しくて、温かくて、陽だまりの中にいるみたいで」
たどたどしく、しゃくりあげながら言葉を続けるAちゃんを、黙って見つめるだけで精一杯やった。
「嬉しかった、治くんの言葉。楽しいことも、辛いことも半分こって」
「私の気持ちも、貰って欲しい。半分こ、しよう」
涙を拭った手の甲が退けて、その顔が見える。一筋の涙を流しながら、Aちゃんは目を細めて微笑みを浮かべた。
その微笑みが夕陽の光を受けて、あまりにも綺麗で。いつの間にか華奢な身体を抱き寄せとった。遠慮する余裕なんか無くて、想いのまんまに抱き締める。匂いも、体温も、身体の柔らかさも、全部感じられるように。
「あかん、泣きそう」
「ふふ、私は、泣いちゃった」
細い腕が背中に回って、心が満たされてく。
そんとき、半分と半分が合わさって。階段には一つのシルエットが浮かんだ。
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アオ(プロフ) - お久しぶりです。あの、「二つの祝福」で侑くんの所属チームが「プラックジャッカル」となっていますが、「ブラックジャッカル」ですよ (2020年5月17日 16時) (
レス) id: eee0ca23b5 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - さむつむさん» コメントありがとうございます！そんなに丁寧にお褒め頂いて光栄です…！幸せな気持ちになって頂けてなによりです！治の優しさや温かさを精一杯詰め込みました！侑編も現在力を入れて書いています！治とはまた違った未来になってますので、どうぞご覧くださいませ！ (2020年4月5日 23時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
さむつむ - すごくおもしろくて、とても感動しました 選んでいる言葉ひとつひとつがとっても綺麗で、私も幸せな気分になりました こんな風に恋愛したいです…！ 侑編も楽しみにしてます 治編完結おつかれさまでした (2020年4月5日 12時) (レス) id: 64968ef88b (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 奈々さん» コメントありがとうございます！温かい感想とっても嬉しいです…！私こそ涙出ます！リクエストもありがとうございます！どちらも素敵なネタですね…！精一杯書かせていただきます！ (2020年3月28日 21時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - れいさん» コメントありがとうございます！素敵な感想とっても嬉しいです…！ご愛読本当に感謝です！侑オチお待たせしました！是非ご覧くださいませ！ (2020年3月28日 21時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あろま
| 作成日時：2020年3月23日 23時
