包みあう ページ21
すぅすぅと安らかな寝息が聞こえてきて、そろりと絵本から目線を移すと、望と歩は小さな身体をゆっくり上下に動かして寝息を立てていた。
『おにぎりの旅』を閉じて静かにベッドから退こうとすると「ママ…？」と微睡んだ望の声が呼び止める。
「ん？どうしたの？」
「んー…、ママ、好き…」
半分寝ぼけているのか、ふにゃりと笑うと、今度こそ完全に夢の中へ冒険をしに出かけたようだ。ブランケットをそっと掛けて、その柔らかな2つの頬にキスをしてから私は一旦寝室を後にした。リビングへ戻れば、治がノートと睨めっこをしていた。
「おう。望も歩も寝た？」
「うん、スヤスヤ寝てる」
その横に座ると治は額に手を当てながら「あー」とソファに沈みこんだ。私が聞くよりも先に「今新作考えとんねん」と治は口を開く。
「そっか。この間の新作から大分経ってるんだっけ？」
「そ。2ヶ月経っとるから。なんか美味いもん…」
んー、と頭を捻る治は、まだお風呂に入っていない。おにぎりのことを真剣に考え出すと止まらないのが治だと知ってるから、私はノートを持つ手に手をそっと添えた。
「治。私明日時間あるから一緒に新作考えるよ。今日はもう遅いからお風呂入って、ゆっくり休もう、ね？」
お店の店長でも経営者でもあり、二児のパパでもある治に無理をして欲しくなくて、そんな思いでそう言うと治は目を丸くしてから困ったように微笑んだ。
「…ホンマ、Aには適わんわ」
クシャりと笑って、大きな手で頭をゆっくり撫でる。「今日も俺の事フォローして、望の気持ちも汲んでくれたもんな」と治は優しく目を細めた。
「感謝しとるよ」
低い声が耳に響いて、大きな身体がぎゅう、と私を抱きしめて包み込む。陽だまりのように温かい治の体温と、ふわりと広がる匂いに、胸がとくとくと小さく波を打っていく。
「私の方が…感謝してもしきれないよ…」
「何言うてん。俺の方がや」
そのままお互い笑いあって、治が抱きしめたまま身体をゆらゆらと揺らす。暫くそうしてから、今度は強めにぎゅっと腕を回すと、そっと顔を耳元に寄せて────────そして熱い息が掠める。
「…一緒に風呂入らへん？」
いつもの巫山戯た様子とは違う、色艶めいた、熱情に掻き立てられた囁き。きゅう、と胸が一気に締め付けられて、私は息を飲んだ。
「い、いいよ…。入ろう」
赤い顔を隠しながらそう答えると、治は満足そうに笑って軽くキスをした。
＊fin＊
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アオ(プロフ) - お久しぶりです。あの、「二つの祝福」で侑くんの所属チームが「プラックジャッカル」となっていますが、「ブラックジャッカル」ですよ (2020年5月17日 16時) (
レス) id: eee0ca23b5 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - さむつむさん» コメントありがとうございます！そんなに丁寧にお褒め頂いて光栄です…！幸せな気持ちになって頂けてなによりです！治の優しさや温かさを精一杯詰め込みました！侑編も現在力を入れて書いています！治とはまた違った未来になってますので、どうぞご覧くださいませ！ (2020年4月5日 23時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
さむつむ - すごくおもしろくて、とても感動しました 選んでいる言葉ひとつひとつがとっても綺麗で、私も幸せな気分になりました こんな風に恋愛したいです…！ 侑編も楽しみにしてます 治編完結おつかれさまでした (2020年4月5日 12時) (レス) id: 64968ef88b (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 奈々さん» コメントありがとうございます！温かい感想とっても嬉しいです…！私こそ涙出ます！リクエストもありがとうございます！どちらも素敵なネタですね…！精一杯書かせていただきます！ (2020年3月28日 21時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - れいさん» コメントありがとうございます！素敵な感想とっても嬉しいです…！ご愛読本当に感謝です！侑オチお待たせしました！是非ご覧くださいませ！ (2020年3月28日 21時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あろま
| 作成日時：2020年3月23日 23時
