その能面、俺が剥がしたる【宮侑、宮治】

恋 ページ41

最後に佐原は小さめサイズのバナナチョコレートパンケーキ。俺は足りんかったからサンドイッチ追加注文した。

「食欲の塊だね」
「お前に言われたないわ」

笑いながらはむ、とサンドイッチを口に頬張りながら佐原見ると「ここのお店のパンケーキも美味しい」と感動して呟く。


「どっかで他に食ったんか？」
「うん。治くんと。あれ、聞いてない？」


おさむくん。桃色の唇から紡がれた名前に、自然と動きが止まる。それまで浮かれとった気分がグングン下がって、それどころか胸の中に黒い靄が掛かっていく。


「いつ行ったん」
「えっとね、テストが終わった日。駅前のパンケーキ屋さんに…」


そこで思い返す。あの日、やけにサムがゴキゲンやった日。俺が佐原にも、サムにも聞けんかったあの日。

「あっそ」と口からぶっきらぼうの代名詞が漏れる。つまらん。ムシャクシャしてサンドイッチにかぶりついたけど、なんやさっきと違って不味い。あからさまにフキゲンになった俺に佐原は「…侑くん？」と困惑しとる。なんやねん、ホンマに、お前は。




「なぁ、今日デートやって知っとる？」




唐突に飛び出した言葉。俺の言葉に、佐原の肩が揺れるのが分かった。ずっと言いたかった。俺の事、もっと男として見て欲しくて、俺だけを見て欲しくて。あぁ、なんや。この気持ち、これ、あれか？


「男と女が、二人で、出かけて、映画見て、飯食って、デートって言うんやで」


視線を上げれば、佐原は「あ…」と頬を赤らめとった。初めて事実に気づいた顔。そないな顔、サムの前でもしたんか。嫌や、俺だけに見せろ。俺だけ。



「なんで今日、俺の誘いに乗った？ホンマに映画の為だけか？誘われたら俺やなくても…サムでも、お前はえぇんか」



全部、嘘や。ただの優越感も、虫除けも。全部、お前に俺だけを見て欲しいっちゅう欲張りな気持ち。全部、お前と一緒にいたいっちゅう、俺の我儘やねん。









「俺は、お前と来たかったから、佐原を──────」








独り占めしたかったから




この気持ち、全部、全部、お前から生まれた。最初は嫌いだったんに、気持ち悪かったんに。

お前は普通の女子で。ちょっと抜けとって、クソ真面目で、花より団子。



お前が他の奴と楽しそうに話してるんを、俺の事意識せぇへんのをつまらん、ムカつくと思うのも。

お前のことかわえぇって思うんも、一瞬におりたい思うんも。








この気持ち、恋や。


欲張りになるんも、恋。

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