オモイ想い ページ47
目の前に広がるのは、啓悟の翼とは対照的な、澄み切った青。白いワンピースを潮風に揺らしながら振り返ると、啓悟はカーディガン片手に苦笑いしていた。
「こら、薄手しない」
「えー。折角のクルーズだからいいじゃん」
「駄目。風邪ひくし、露出が多い」
自覚持ってくださいよ、奥さん。と手すりを掴む私の手と、そこに重なる彼の手には、銀色が太陽光を受けて海面のように煌めいていた。
「…ふふ、私、幸せすぎて浮きそう」
もう既に足元から3センチ浮いている私に、啓悟は「俺のこと大好きすぎて困っちゃうなぁ」なんて言ってみせる。
「だって、しょうがないでしょ？大好きなんだから」
おどけた笑顔の啓悟を見上げてそう言うと、彼は目を丸くしてから頬を染めて「はぁ…、そういうとこなんだよなぁ…」と顔を隠してしまう。
「え？」
「ん、なんでもない。まぁ俺は大好きじゃなくて愛してるけどね」
「私だって愛してるもん」
「俺はAよりずっと、ずーっと愛してるよ。俺の愛情は重いからね」
「ふふ、私だって重いんだから」
くだらない張り合いをしていて、気づいた途端あははと笑顔が零れる。爽やかな潮風にうたれながら景色を眺めていると「ねぇA」と明るい声音で彼が話しかける。
「海の上飛ぼうよ」
「え？」
聞き返す前に啓悟は「よっ」と横抱きにして歩き出す。そればかりか口笛まで吹き始める啓悟に「ちょっと、啓悟！」と足をじたばたさせると「はーい暴れない」
そう言いながら手すりに足をかける啓悟に観念してぎゅっと目を瞑ると「大丈夫だから」と優しく囁いて彼は大きな翼を羽ばたかせた。
一気に空へ舞い上がっていき、気づけば大きいと感じていたクルーズ船が小さくなっていて「うわぁ…！」と思わず声を上げる。
それを反動に、一気に身体が軽くなって、私は啓悟の腕を離れていく。手を繋ぎながら、空中でダンスするように飛び回っていると、彼は私をそっと抱き締めた。
「これからも、俺と一緒に飛んでくれる?」
黄金の瞳が少し伺うように此方を見つめているものだから、私はクスリと笑ってその隙のある唇にちゅっとキスをした。
「うん、啓悟が嫌だって言っても、離してあげないから」
悪戯に微笑むと、啓悟は豆鉄砲を食らった鳩みたいな顔をして「そうだね」と呟いた。
クルーズ船の上から聞こえる拍手を感じると共に、お互いに芽生えた溢れるほどの"オモイ想い"にいつまでも浸っていたいと、そう思った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1409人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おちゃきち(プロフ) - イッキ読みさせていただきました！あとがきにある、ホークスの恋愛観、めっちゃストンときました。凄く記憶に残るとっても濃くて良い作品だなと思いました。素敵な作品を書いてくださってありがとうございました…😭 (2021年10月15日 12時) (
レス) @page48 id: 78dc48b955 (このIDを非表示/違反報告)
かよ(プロフ) - めっちゃくちゃ面白かったです！！！最高です！！本当にありがとうござます！！これからも応援してます！ (2020年7月5日 14時) (レス) id: a82fd268db (このIDを非表示/違反報告)
紅波 - もう既に書き終わっている状態で一気読みしました。もう最高です。どこからこんなに素敵な小説が出てくるのか知りたいです...。応援してます！ (2020年6月5日 8時) (レス) id: 2ce5490af6 (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - 少し覗いていない間に完結していて驚きました。この2人には一生2人で飛んでいてほしいですね。(クルーズ船に乗ってる人になりたい)何はともあれ(？)完結おめでとうございます！素敵な作品をありがとうございました！ (2020年5月17日 16時) (レス) id: eee0ca23b5 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 花帆さん» コメントありがとうございます！そんな風に言って頂けて嬉しいです！ホークスをとびきり幸せにできて私も大満足です…！閲覧ありがとうございました！ (2020年4月28日 8時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あろま
| 作成日時：2020年1月2日 22時
