禁止令 ページ16
『今日はすぐ帰るから』というメッセージに自然と頬が緩む。一週間ぶりに戻ってきたマンションは想像していたよりずっと綺麗だった。埃も落ちていないし、洗濯物も溜まっていない。
(留守にしちゃったし、お礼に何か啓悟の好きな物作ろうかな)
そんな風に思案しているとガタ、とベランダから物音。真逆と思った途端にドアが開いて翼を閉じる啓悟が此方を丸い目で見つめていた。
「A」
「啓悟、ただいま！」
駆け寄る私より先に啓悟が抱き締める。ぎゅうう、と抱き締めてから翼めすっぽり覆われ、辺りが赤に染める。
「けーご…？」
「おかえり。充電させてよ。俺とっくの昔に切れちゃったから」
いつもの軽口とは裏腹に肩に顔を押し付ける彼に寂しかったんだなぁ、なんて察して。
「私も、すっかり充電切れだよ」
気恥ずかしく思いながら彼の背中に手を回すと、啓悟は抱き締める力を強くした。
夕飯を作ろうとする私に啓悟は「疲れてるでしょ。もう出前取ってあるよ」と冷蔵庫の中から料理を取り出す。有名料理店の突然の料理の出現に呆気に取られながら、有難く食べることにした。
「…それで、高校時代仲の良かった先輩と飲みに行ったの」
「へぇ、Aは可愛いから先輩にも好かれるんだろうね」
土産話をしていると啓悟がにっこりとした笑顔を浮かべながらそんな事を言った。さっきからドキマギさせるような台詞を言う彼は自然体なのか策士なのか。
「どのくらい飲んだの？」
「3時間くらいそのお店で飲んで、それから──────」
ぽん、と不意に焦凍くんの真剣な表情が浮かんだ。濃い赤と白が目に焼き付いて「あ」と声を漏らす。
「ん？」
「えっ、ううん、なんでもない」
『特別な人です』と形の良い唇がそう表したのを思い出して頬が熱くなる。真逆歳下の男の子に翻弄されてしまうとは。
(変な意味じゃないって分かってるのに…)
動揺して浮かんだり沈んだりしていると「…なんかあった？」と声が響いた。見あげれば静かな表情で私を見つめている。
「…あ、その、先輩の弟くんと久しぶりに話して。いや、その凄く大人びててビックリしたなぁっていうか」
言葉を続けていると彼は目を細めて「ふぅん」と素っ気なく呟いた。
「…今は俺の前で他の男の話しちゃダメ」
啓悟は低く囁くと、顎に手を添えて唇をそっと親指をなぞった。手つきのわざとらしさにボッと顔が赤くなる様子を、彼は愛おしそうに見つめていた。
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おちゃきち(プロフ) - イッキ読みさせていただきました！あとがきにある、ホークスの恋愛観、めっちゃストンときました。凄く記憶に残るとっても濃くて良い作品だなと思いました。素敵な作品を書いてくださってありがとうございました…😭 (2021年10月15日 12時) (
レス) @page48 id: 78dc48b955 (このIDを非表示/違反報告)
かよ(プロフ) - めっちゃくちゃ面白かったです！！！最高です！！本当にありがとうござます！！これからも応援してます！ (2020年7月5日 14時) (レス) id: a82fd268db (このIDを非表示/違反報告)
紅波 - もう既に書き終わっている状態で一気読みしました。もう最高です。どこからこんなに素敵な小説が出てくるのか知りたいです...。応援してます！ (2020年6月5日 8時) (レス) id: 2ce5490af6 (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - 少し覗いていない間に完結していて驚きました。この2人には一生2人で飛んでいてほしいですね。(クルーズ船に乗ってる人になりたい)何はともあれ(？)完結おめでとうございます！素敵な作品をありがとうございました！ (2020年5月17日 16時) (レス) id: eee0ca23b5 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 花帆さん» コメントありがとうございます！そんな風に言って頂けて嬉しいです！ホークスをとびきり幸せにできて私も大満足です…！閲覧ありがとうございました！ (2020年4月28日 8時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あろま
| 作成日時：2020年1月2日 22時
