検索窓
今日:5 hit、昨日:1 hit、合計:247,960 hit

*** ページ46

茶と茶菓子の準備をしているAが早く来ないか、来ないかと待ち侘びる。


きっと、左手に持っているこの1輪の天竺牡丹はもう知られてしまっているだろうけど。


気配がして、Aが正座をするのがわかった。そうして茶と大福を傍らにそっと置く。


「ねぇ」


「え…大福嫌だった?」


どこか強まってしまった声音に、変な勘違いをする彼女がこてんと首を傾げる。僕は何処か焦れったい思いをしながら天竺牡丹を差し出した。





「花屋でAみたいだなと思って。あげるよ」


「わぁ…!綺麗なお花、ありがとう!」





両手で花を受け取ると、子供のように目を煌めかせながら様々な角度から眺める。




「なんて言うお花なの?」


「天竺牡丹って言うんだけど、海外では"だりあ"っていうんだって」


「だりあ…」




確かめるように名前を呟くとAは「大事にするわ」とすぐに花瓶にさした。


再び縁側に2人並ぶと、それまで目を伏せていたAが口を開いた。




「時透くん、さっきは本当にありがとう…。


びっくりしちゃったわ、時透くんが格好よくて」



湯のみ茶碗に伸ばしていた手を、思わず止める。僕は頭がガツン、と揺さぶられたようだった。




「さっきの男の人、本当に毎日のようにしつこく迫られて困っていたの。


時透くん、頼もしいわね」





──────あぁ、なんにも伝わってない。


今まで必死に無視していたのに、Aの言葉で気づいてしまった。


Aが僕の事を"男"として見ていないこと。







「──────僕だって、男なんだけど」







だん、とAを縁側に押し付ける。瞬時に頭をぶつけないように手加減したけれど、それでもAにとっては衝撃だったようで。



「いっ…、と、時透、くん…?」


「僕だって、毎日来てるでしょ。しつこく君のそばに居る」


伝われ、伝われよ。初めてその上品な笑みを崩せた事が嬉しかった。揺れる瞳で僕を見つめるその表情が堪らない。





「僕は君のなんなの?可愛い弟?


そんなの全部Aの都合のいい思い込みだよ。こうやって押し倒して、迫る僕はただの男だよ」




すぅ、と紅を塗った唇に触れると、その唇が「ときとうくん」と形づくった。潤んだ瞳、ほんの少し火照った扇情的な姿に喉仏が動く。









「僕だけの1輪の花」









さぁ、可憐に、優美に咲いていて。






天竺牡丹:可憐、優美

勿忘草:竈門炭治郎→←***



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (190 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
388人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 鬼滅 , 短編集   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

あろま(プロフ) - 謎の桃さん» コメントありがとうございます!好きと言って頂けて嬉しいです!続編の方も是非ごらんください! (2020年1月5日 17時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
謎の桃 - ぐっ…好きです…(死 (2020年1月3日 11時) (レス) id: 54222cb971 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - あろまさん» 分かりました。大丈夫です。 (2019年11月1日 9時) (レス) id: 87339a530e (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 零奈さん» リクエストありがとうございます!実弥ですね!実弥らしいお話ですね…!精一杯書きます! (2019年10月31日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 美桜さん» リクエストありがとうございます!煉獄さんのリクエスト嬉しいです!ですがすみません、夢主が柱という設定を普通の一般隊士にしたいです。ご了承ください…! (2019年10月31日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:あろま | 作成日時:2019年9月25日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。