鈴蘭:不死川実弥 ページ24
一生を添い遂げたい男性。
誰にだってそのような人はいる。日々忍者のような格好をして口当をし、鬼殺隊を影から支えるような私であっても。そんな、半分お洒落と女を捨てたような人間であっても、想いを寄せる人がいるのだ。
「あっ、風柱様だわ」
同期の隠が顔を顰める中、肩がビクリと跳ねる。そっと振り向けば風柱様が此方へ向かってきていた。
「こっちに来る」
「おィ」
鬼を切ってきたのだろうか、若干返り血を浴びてはいるが無傷の風柱様の姿に内心ホッと息をつくが、同期の隠はその鋭い目付きに射られたように身体を強ばらせて「はい、風柱様!」と返事をする。
私も続けて裏返った声で返事をすると風柱様は辺りを見回して問うた。
「ここの事後処理は終わったのかァ?」
「はい!終わりました!後は周辺への被害の確認をして終わりでございます」
「そうかァ、お疲れさん」
"お疲れさん"仕事のときだけ聞けるその言葉に口元の下の頬を緩ませる私に「行くわよ」と同期が促す。
名残惜しく思いながらも失礼します、と頭を下げた私の腕を──────風柱様が掴んだ。
「え」
「おい、お前ェ、足捻挫してるだろォ」
風柱様はそう言うと私の右足を指さした。ぎくり、そう擬音がつきそうに肩を跳ねさせて私は足を後退させる。
「見れば分かる。そんな足で仕事しても足でまといになるだけだァ」
風柱様の最もなお叱りは結構胸に来た。貴方に会いたくて、貴方に私の姿を見てもらいたくて、痛いのを我慢して仕事をしていたのに。
(あれ、やだな)
そう思ったのも束の間。視界がじんわりと滲んでいく。自分が泣きそうなことに気づいて俯くと、風柱様は隊服の内側をまさぐって何かを取り出すと私の掌に握らせた。
「喰え、やる」
そう一言だけ言うと同期の隠に「彼奴看てやってくれェ」と言い残してサッと消えてしまった。
霞む視界の中でカサリと音のするものに目をやると、華やかな包装に包まれたみすず飴が一つ。
透き通るような桃色をしたそれは、私の意表を突くには充分なもので。一気に涙が引っ込んでいく。
同期に足を看られる中、ひょい、と軽やかに口に運ぶと桃の優しい味が口の中に広がって。
──────風柱様の、不器用な優しさに尚更目尻が熱くなってしまったのでした。
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あろま(プロフ) - 謎の桃さん» コメントありがとうございます!好きと言って頂けて嬉しいです!続編の方も是非ごらんください! (2020年1月5日 17時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
謎の桃 - ぐっ…好きです…(死 (2020年1月3日 11時) (レス) id: 54222cb971 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - あろまさん» 分かりました。大丈夫です。 (2019年11月1日 9時) (レス) id: 87339a530e (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 零奈さん» リクエストありがとうございます!実弥ですね!実弥らしいお話ですね…!精一杯書きます! (2019年10月31日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 美桜さん» リクエストありがとうございます!煉獄さんのリクエスト嬉しいです!ですがすみません、夢主が柱という設定を普通の一般隊士にしたいです。ご了承ください…! (2019年10月31日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あろま | 作成日時:2019年9月25日 17時