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「…これを飲むのかァ」


鱗を溶かした銀色の液体を見て実弥はそう呟いた。



「水銀みてェだな」


「確かに似ているが効果は真逆だ。秘宝の万能薬だぞ」



飲め、と促すと実弥は一気に薬を飲んだ。怪しんでいた割には難なく飲んだ実弥に少し内心驚かされる。



「不味くはねェが美味くもねェなァ」


「薬だから仕方ないだろう」



さぁ、もう寝るんだと言うと、実弥は私の足元を指さした。サッ、と隠すも実弥はそれを見逃さない。


「おい、足どうしたァ」


実弥が指をさしたのは龍の姿のときに鱗を剥がした所だった。


見事巻いていた包帯に血が滲んでいる。



「山菜を取りに行ったときに掠っただけだ」


「見せてみろ」


「なんでもない」



私の拒絶を押し切って実弥は引っ張った。よろけた私を片腕で抱き留めて足をぐい、と上げる。


「何をする!」


「大人しくしてろォ」


包帯を無遠慮に取ると傷跡が現れる。実弥はその傷跡を見るとあからさまに不機嫌になった。



「人の心配より先に自分を大事にしろォ」



実弥はそう言うと薬を傷跡にそっと塗りこんだ。人間には効くが、龍には勿論効かない。それでも、それでも。実弥のその行動だけで傷の痛みが和らいでいくようだった。


慣れた手つきで新しい包帯を巻くと、実弥は頭に手を置いて「今日もありがとなァ」と呟いてごろりと横になった。


耳元を掠めた低い囁きが、頭から離れない。触られた足と頭が、なんだか熱を持ったようだ。なにより、心臓が明らかに早い鼓動をうっている。まるで走ったときのようだ。







「…私は…、一体どうしたというんだ」







実弥の寝顔を見るのが日課になっていたのに、その日は胸の高鳴りが鳴り止まなくて直視することが出来なかった。









1週間が経った。


朝起きたとき、それを認識して胸が痛んだ。実弥と過ごせば過ごすほど心が高揚して、"幸せ" と呼ぶに相応しい温かな感情が生まれた。


「あぁ…、これを愛しいというのか」


世界は残酷だ。そんなことは昔から知っていたのに。








実弥と別れなければならないその日に。私は初めて自分が実弥を愛していたことに気づいてしまった。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 鬼滅 , 短編集   
作品ジャンル:アニメ
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あろま(プロフ) - 謎の桃さん» コメントありがとうございます!好きと言って頂けて嬉しいです!続編の方も是非ごらんください! (2020年1月5日 17時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
謎の桃 - ぐっ…好きです…(死 (2020年1月3日 11時) (レス) id: 54222cb971 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - あろまさん» 分かりました。大丈夫です。 (2019年11月1日 9時) (レス) id: 87339a530e (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 零奈さん» リクエストありがとうございます!実弥ですね!実弥らしいお話ですね…!精一杯書きます! (2019年10月31日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 美桜さん» リクエストありがとうございます!煉獄さんのリクエスト嬉しいです!ですがすみません、夢主が柱という設定を普通の一般隊士にしたいです。ご了承ください…! (2019年10月31日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あろま | 作成日時:2019年9月25日 17時

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