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ある日、荻さんが亡くなった。


途方に暮れる私に、同じ任務に出た隊員が言うには、戦場の真ん中で身体が動かなくなってしまったらしい。


隊員が無理に動かそうとしても、まるで石のように動かず、そのまま鬼に──────。





「荻さん、どうして…」





見るも無残になった彼の遺体を、私はただ眺めることしかできなかった。


止まってくれれば良かったのに、悲しみは止まらなかった。




『水瀬さんの旦那さん、皆亡くなってるのよ』




いつしかそんな噂話が流れ始めた。ヒソヒソと影で囁かれる悪口。親しい友人も、近所の人も離れてしまった。





「…どうして、こんなことに…?」






自然と涙が溢れていた。気づけば自分の人生が狂い始めていた。


どうして、どうして。


どんなに問うても答えは見つからない。突然──────くらり、目眩がして私は倒れ込んだ。









『その理由は、君がよく知っているだろう?』


目の前に杏寿郎さんがいた。何も無い暗黒の世界の中で、杏寿郎さんが私の顔を覗き込んでいた。


数年前に亡くしてしまった、愛おしい人。好きだった人。でも私は彼を裏切ってしまった。



「杏寿郎さん…」



やつれた私の頬を撫で、彼は優しく微笑む。なんて温かい手だろう。久しぶりに触れ、感じる人肌に私は涙した。





『ずっと、ずうっとAを見守ってきた。しかし今日でその役目は終わりだな』


「見守って…?」





優しい笑顔のまま言葉を続ける杏寿郎さんに違和感を覚える。問い返すと、杏寿郎さんは怪しく光る目を開いた。





『君が言ったじゃないか。"見守って"いてね、と』




その瞬間──────ドクンと心臓が一際大きく高鳴った。それを合図に、鬼を前にしたときのように身体が動かなくなる。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 鬼滅 , 短編集   
作品ジャンル:アニメ
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あろま(プロフ) - 謎の桃さん» コメントありがとうございます!好きと言って頂けて嬉しいです!続編の方も是非ごらんください! (2020年1月5日 17時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
謎の桃 - ぐっ…好きです…(死 (2020年1月3日 11時) (レス) id: 54222cb971 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - あろまさん» 分かりました。大丈夫です。 (2019年11月1日 9時) (レス) id: 87339a530e (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 零奈さん» リクエストありがとうございます!実弥ですね!実弥らしいお話ですね…!精一杯書きます! (2019年10月31日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 美桜さん» リクエストありがとうございます!煉獄さんのリクエスト嬉しいです!ですがすみません、夢主が柱という設定を普通の一般隊士にしたいです。ご了承ください…! (2019年10月31日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あろま | 作成日時:2019年9月25日 17時

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