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「…天元様の愛情は残酷です。皆平等ですから。そんなのは分かっているつもりでした。
けれど、けれど貴方を独り占めしてしまいたいと、そう思ってしまって…」
話しているうちに、涙が出てきてしまった。どうして自分が泣いているのかわからない。あぁ、この後、貴方に嫌われる未来を想像したからだ。
「…っ、ごめんなさい。こんなに汚い心を持ってしまって。
だから私、辛くて苦してくて、天元様の元に居られなくなってしまって」
両手で顔を覆うと、突然力に引き寄せられてぎゅう、と包まれた。
あまりの苦しさに息が詰まりそうになりながら、なんとか呼吸をする。
「て、んげん、さま…っ?」
「…お前がそんな風に思っていたのに、気づけなくて悪かった」
初めて聞く、泣きそうな静かな声に胸がきゅうと締め付けられる。
「天元様、良いのです。全て私が悪いのです。
ですから」
「──────Aを手放すなんて、しねぇからな」
私の言葉の先を読んだように、天元様はそう呟いた。
身体を離して此方を見つめる天元様の表情は静かで硬く、真剣なものだった。
「俺の元に戻れ。お前だけを愛することを誓う」
静寂な空気に、天元様の低い声が響く。その声は風に乗ってすぐにどこかへ消えてしまったけれど、私の耳に、そして私の胸の奥に何度も響いて心まで揺らしてしまう。
「な、何を言っているのですか!?」
「…確かに俺は雛鶴もまきをも須磨も愛してる。
でもな、でも、…お前を、それ以上に愛してんだ」
天元様の言葉にほろり、自然と涙が溢れる。まるで愛を告げられた日のように、涙がが溢れて止まない。
「才能がないながらもくノ一として必死に努力するお前を、昔からずっと見ていた。
自分を卑下するお前を見て、『あぁ、俺が此奴に"愛されてる"っていう自信を持たせてやりてぇ』そう思った」
情けなく泣く私の右頬を優しく撫でると、天元様は熱を持った瞳で見つめた。
「──────愛してる、A」
嗚呼、こんなに幸せな事があってもいいの?
「良いのですか、天元様…っ?」
「あぁ、嫁たちもお前のこと大好きなんだよ。だからきっと、きっと認めてくれる」
お前と結ばれろって、愛の信託が来てんだよ。そう囁くと天元様は酷く優しい微笑みを向けた。
いつの間にか溢れていた涙は引っ込んで。私も幸せな笑顔を浮かべていた。
蒲公英:別離、愛の信託
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あろま(プロフ) - 謎の桃さん» コメントありがとうございます!好きと言って頂けて嬉しいです!続編の方も是非ごらんください! (2020年1月5日 17時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
謎の桃 - ぐっ…好きです…(死 (2020年1月3日 11時) (レス) id: 54222cb971 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - あろまさん» 分かりました。大丈夫です。 (2019年11月1日 9時) (レス) id: 87339a530e (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 零奈さん» リクエストありがとうございます!実弥ですね!実弥らしいお話ですね…!精一杯書きます! (2019年10月31日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 美桜さん» リクエストありがとうございます!煉獄さんのリクエスト嬉しいです!ですがすみません、夢主が柱という設定を普通の一般隊士にしたいです。ご了承ください…! (2019年10月31日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あろま | 作成日時:2019年9月25日 17時