七竈:煉獄杏寿郎 ページ1
「ずっと俺が傍にいる」
嘘を嫌う貴方がついた、それが最初で最後の嘘だった。
ある日突然、貴女は私を置いて死んでしまった。乗客200人余りを柱として守り抜いた彼の死は所謂"名誉ある死"だそうで。
「素晴らしい最期だった」「彼の死は誇り高いものだ」
葬式でボソボソと囁かれるそれは、悲しみに打ちひしがれた私にとっては辛すぎた。
「私は、貴女のものなのに…」
祝言を上げて、これから幸せに暮らす、そのはずだったのに。
あぁ、酷い。こんなのあんまりにも酷い。そう思うほどに貴方を愛しすぎてしまった。
「目を覚まして、杏寿郎さん」
私がゔ、ぅう…と泣き崩れても、棺桶の中の杏寿郎さんは涙を拭ってくれはしなかった。
──────あぁ、私、守られてる。
そんな風に確信した。まるで守り神がついているかのように、私は守られていた。
雲行きが怪しくなってきて、軒下に駆け込んだ途端、雨が降ったこと。足を滑らせて階段から落ちたけれど、無傷だったこと。馬車に轢かれそうになる寸でのところで馬車が方向転換したこと。
数え上げればキリがない。それ程に私は"何か"に守られていた。
時々、誰かに抱きしめられているかのような感覚が訪れる。寒い、と自然と口にすると、その感覚は強まって、胸がぎゅっとなる。
「杏寿郎さん…杏寿郎さん、いるのね?」
漸く気づいた。その守り神の正体が杏寿郎さんであることに。きっと私のことが気がかりで成仏するにしきれなくて、こうして幽霊として私に憑いて守ってくれている。
問いかけると、耳元で「あぁ、そうだ」と杏寿郎さんの声がしたような気がした。太陽のような温かさに包まれ、私の双眸からは自然と涙が零れる。
「あったかい…、杏寿郎さん」
そう呟くと、杏寿郎さんは小さく笑みを零して頭を撫でているようだった。
心地よい風のように、頭が優しく撫でられる。
「杏寿郎さん、ずっと、傍にいて、見守っていてね──────」
私がそう囁いて見えない彼の身体に擦り寄ると、杏寿郎さんが「もちろんだ」と頬に口吸いを、した気がした。
それからまた守られた。──────けど、"今度は"違った。
夜遅く、無くなった醤油を買い物にいった帰り道。
早く帰ろうとして裏道を通ったのが運の尽きだったらしい。
「けっけっけ、こんな所に生娘がいるとはなぁ…」
──────真逆、鬼に出会してしまうなんて。
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あろま(プロフ) - 謎の桃さん» コメントありがとうございます!好きと言って頂けて嬉しいです!続編の方も是非ごらんください! (2020年1月5日 17時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
謎の桃 - ぐっ…好きです…(死 (2020年1月3日 11時) (レス) id: 54222cb971 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - あろまさん» 分かりました。大丈夫です。 (2019年11月1日 9時) (レス) id: 87339a530e (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 零奈さん» リクエストありがとうございます!実弥ですね!実弥らしいお話ですね…!精一杯書きます! (2019年10月31日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 美桜さん» リクエストありがとうございます!煉獄さんのリクエスト嬉しいです!ですがすみません、夢主が柱という設定を普通の一般隊士にしたいです。ご了承ください…! (2019年10月31日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あろま | 作成日時:2019年9月25日 17時