雨と繰り返し ページ29
庭が綺麗だと言って外に出た。中庭を歩いていると藤子は困ったように眉を下げた。
「私が思い出したのは、私が貴方様とお見合いをした事がある、という事だけです。それ以外は全く…」
「お見合い、ですか」
認めたものの、杏寿郎は半信半疑であった。自分が同じ名前の煉獄杏寿郎であるとは。
しかし杏寿郎を取り巻く環境がそれを教えている。「早く気づけ」と暗示をしてくるのだ。
杏寿郎はふと思い出した。この間のAの言葉を。
『…あの人、お見合いしたんだわ。ちょうどそう、杏寿郎みたいに、親に言われて…』
まるで同じだ。親に言われて見合いをしたこと。全てが合致するのだ。
となると、前世の自分──────つまり煉獄杏寿郎は藤子と見合いをしたわけであるが、それはどうなったのか…。
杏寿郎のそんな思案の様子を察したのか、諦めたような微笑みを浮かべて藤子は足を止めた。
「…そのお見合いは破談致しました」
「…！」
言葉が出ない。心臓が嫌な鼓動をうち鳴らすのを聴きながら杏寿郎は真っ直ぐに向き合って藤子を見つめた。
「前世の貴方様は、親に言われてお見合いを致しました。なので決して不誠実な気持ちではありませんでしたの。
告げられました。お見合いが始まって暫くしてから。
『愛する女性がいるのだ。すまない』と」
杏寿郎はハッとした。愛する女性──────それはつまり、Aの事だ。
杏寿郎は拳を強く握り締めた。何も知らずに行きてきた自分を恥じた。
もとより杏寿郎にはこの縁談を受ける気持ちは無かったのだ。最後、別れ際に告げようと思っていた──────「愛する女性がいます。申し訳ございません」と。
藤子に全く同じ事をしようとしている。しかし藤子はそうではない。杏寿郎は彼女の瞳から目を離せない理由に今更ながら気づいた。
──────その真っ直ぐな視線が、瞳が、杏寿郎へと想いに満ち溢れているからである。
「…先程私は嘘をつきました。私、他にも思い出した事がございます。
──────貴方を、前世からお慕い申しているということです」
杏寿郎を見つめて切なそうな微笑みを浮かべる。あまりにも綺麗だった。想いも綺麗で、杏寿郎は目が回りそうだった。
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あろま(プロフ) - ネコ２世さん» コメントありがとうございます！コメント遅くなってすみませんでした…！今までで1番と言って頂けて嬉しいです！こちらこそ読んで下さり本当にありがとうございました！ (2019年11月15日 18時) (
レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
ネコ２世 - 完結おめでとうございます！最後、主人公と煉獄さんで現世で再会出来て本当に良かったです！今まで様々な夢小説を読んできましたが、一番好きな作品です！書いてくださりありがとうございます！ (2019年11月2日 20時) (レス) id: 6d89e33ad2 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - ukiさん» コメントありがとうございます…！丁寧で素敵なお褒めの言葉光栄です…！そう言って頂けて本当に嬉しいです！これからもよりよい作品が作れるように尽力していきます！ (2019年10月25日 19時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
uki(プロフ) - 完結おめでとうございます。ただただ、最高の一言につきます。他作品も読ませて頂いておりますが、あろま様の文面が繊細で自然と涙が溢れておりました。自分自身が清くなれた気がします。これからも応援させて頂きます。ありがとうございました。 (2019年10月25日 1時) (レス) id: b46c65ea42 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 仍さん» コメントありがとうございます！読んで頂いた上に素敵なコメント嬉しいです…！私もこのコメントに幸せな気持ちになってます…！これからも頑張ります！ (2019年10月20日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あろま
| 作成日時：2019年9月3日 16時
