矛盾ト枷 ページ8
目を覚ませば、Aは身に覚えのない屋敷にいた。屋敷というよりは少しばかり脆く柔いが、既視感を感じながら辺りを見渡すと其処は部屋のようだったが、ものは殆ど置いておらず、そこが自室ではないことを確信した。
身を起こせば、足元からジャラ、という聞きなれない音がした。気持ち程度に掛けられている薄い毛布をゆっくりとめくれば、Aの片足首には枷のようなものがついていた。ただし、その足枷には、彼女を傷つけないための配慮か、ファーがついていて、それを確認したところで、Aは自分が身の危険には晒されていないのだろうということに多少の安心感を抱いた。それにしても、思い出せない。確か、しのぶに挨拶をして蝶屋敷を出て、それから…。
Aが頭を抱えていると、玄関から続く廊下の角からその人物と目が合った。────“累”は、Aと目が合うといつもと変わらない声でAに言った
「おはよう」
それは彼女が監 禁されていることを忘れてしまうくらいの、何気ない挨拶だった。
「……何のつもりかな累」
口元は薄っらと笑っているが目は笑っていない。彼女の綺麗な赫色の瞳からは、静かな憤りが感じられた。彼女は、いつでも自由にありたかったのだ。だから足枷をされているこの状況が酷く悲しく、ツラかった。その勢いのまま累を睨む。けれど、累はそれに全く怯むことはなく、寧ろ「愚問だ。」とでも言うような顔をする。
「なにその目。Aは蝶になりたいんだろ」
「そうだよ。それは今も変わらない。だからこの枷を外してくれないかな」
「……なんで?きみは僕がいるから蝶になれているんだ。本当はもっと感謝するべきなんじゃないの?僕がいないと君は蝶にはなれないんだから。」
「…なに。待って、どういうこと?」
多弁になって話し始める累に、Aは困惑する。彼女が困惑するのも無理はないだろう。何故なら、累は蝶は蜘蛛に囚われて当然のものと思っているからだ。何時もの屋敷にある蜘蛛の巣には蝶は必ず引っかかっている。捕まったら最後逃げ出せない哀れな蝶が。けれど、もとはというと蝶は自由な存在だ。自由奔放で夜になれば月めがけて飛んで行く。前者の考え方が累の方であり、後者の考え方がAである。…つまり、そんな真実であり嘘である矛盾が二人の間では発生しているのだ。
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羅刹(プロフ) - rosea さん» 凄く凄く嬉しいです有難う御座います!!!( ; ; )頑張って更新していきたいと思います!素敵なご感想を心から有難う…! (2019年9月2日 23時) (レス) id: 8e721ab01a (このIDを非表示/違反報告)
羅刹(プロフ) - rosea さん» うあ〜〜!!やってしまってましたッ!ご指摘ありがとうございます(*´`*)!!! (2019年9月2日 23時) (レス) id: 8e721ab01a (このIDを非表示/違反報告)
rosea - とても面白いお話だと思います!頑張ってください(*≧∀≦*) (2019年9月2日 22時) (レス) id: de9e002270 (このIDを非表示/違反報告)
rosea - 鬼滅隊ではなく鬼殺隊なのでは? (2019年9月2日 22時) (レス) id: de9e002270 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:羅刹 | 作成日時:2019年9月2日 14時