あの子ト歪み ページ3
鬼と少女が離れてから、約五年ほどの月日が経とうとしていた。少女だった幼子は今では大人の女性へと変化している。そして、何よりも変わったのは、Aという少女が鬼殺隊へと入隊していることだった。この五年で、彼女は呼吸技を極め、沢山の人や鬼と関わり仲間ができた。然し。それらの達成感とともに、不安もあった。
それは幼き頃に良く話をしていた鬼のことだ。名前はまだちゃんと覚えている。累、それが彼の名前だった。
確か唐突に山を出たんだっけ、なんて思い出して少しだけ懐かしくなる。Aは思わず頬が緩みそうになるのを必死に抑えて、林をかき分け進んでいく。累はAという人間を覚えているのだろうか、彼女の心臓と脈は不安と期待でドクドクと波打った。
***
「…女の鬼狩りを捕まえて来い?」
「うん。」
とある山の奥にひっそりと暮らす鬼の“家族”がいた。その中の末っ子は蜘蛛の糸で綾取りをしながら淡々と答える。何を言ってるんだ、有り得ない。累の家族の誰かは心の中で何度もそう思う。けれど、口には出せない。口に出したら最後、何をされるかわからないからだ。
「でも急にどうして?…私達家族の脅威となりゆるものならなら殺してしまえばいいじゃない」
「…殺す?姉さんが、“あの子”を?」
「ひッ、!」
“あの子”と、累が口にした刹那辺りには殺気が充満した。心身が震え上がるような今迄に感じたことの無い感覚に浮き足立つ。冷や汗が止まらない。
「いい?姉さん。近頃あの子は必ず此処に来る。……だからその時は宜しくね」
「……。ええ、勿論わかっているわ。」
“姉さん”と呼ばれた一人の鬼は、累から発せられた“あの子”という存在が少し…否、かなり気になったが、聞くのは気が引けたので聞かなかった。
見てわかる通り、この家族は偽りだ。寧ろ偽りでしかない。ただの寄せ集めの家族。累は家族という概念に縛られ、恐怖による支配で絆を作ろうとしていた。────歪んでいる。その一言が今の累にはピッタリであった。
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羅刹(プロフ) - rosea さん» 凄く凄く嬉しいです有難う御座います!!!( ; ; )頑張って更新していきたいと思います!素敵なご感想を心から有難う…! (2019年9月2日 23時) (レス) id: 8e721ab01a (このIDを非表示/違反報告)
羅刹(プロフ) - rosea さん» うあ〜〜!!やってしまってましたッ!ご指摘ありがとうございます(*´`*)!!! (2019年9月2日 23時) (レス) id: 8e721ab01a (このIDを非表示/違反報告)
rosea - とても面白いお話だと思います!頑張ってください(*≧∀≦*) (2019年9月2日 22時) (レス) id: de9e002270 (このIDを非表示/違反報告)
rosea - 鬼滅隊ではなく鬼殺隊なのでは? (2019年9月2日 22時) (レス) id: de9e002270 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:羅刹 | 作成日時:2019年9月2日 14時