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「後遺症が残ったのは、左脚だけじゃない。
左肩から左手の先まで。・・・後遺症が残ってて、ピアノは弾くなって言われてる」
「・・・そ、んな」
俺の隣で、信じられないと言わんばかりに目を見開いて言葉を失っている聡に、何も声をかけてあげられないくらい、健人くんから聞かされた事実は、あまりにも衝撃的だった。
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「・・・でも、・・・弾けてる、じゃん。・・・・・弾くなって言われてるだけで、実際ピアノは弾けるんでしょ・・・?」
やっと出た声は、自分の声と思えないほど震えていた。
「・・・弾けるよ、今はね。・・・これ以上左手を使ったら、もう一生使い物にならなくなるらしいけどね」
「っ、」
「っ、聡ちゃん!」
あまりのショックにふらりとよろめいた聡を、隣にいたマリが慌てて支える。
そんなふたりを横目に、俺は、穏やかに淡々と残酷な事実を告げるケンティーが、どこまでも信じられなくて、彼から目が離せないままだった。
「・・・使い物にならなくなるっていうのは、ピアノが弾けなくなるってこと?」
珍しく声の震えを隠せていない風磨くんをみて、伏し目がちに微笑んだ健人くんが口を開く。
「ピアノはもちろん弾けなくなるな。あとはさっきみたいに何も持てなくなんじゃね?」
「っ、何弾いてんだよ・・・!」
他人事みたいに軽い調子で、とんでもないことを言う健人くんに、込みあげる気持ちを抑えられなかったのか、ついに激昂した風磨くんが彼の胸ぐらを掴みあげた。
「使い物にならなくなるってわかってんならなんでっ!」
「っ、風磨くん!」
「自分が何言ってるかわかってんのかよ!お前にとってピアノはそんな軽いもんじゃねえだろ!」
「っ、軽くないからこうして捨てられずに弾いてんだろ!俺が弾かなきゃいけないときは今なんだよ!」
「いい加減にして!!」
マリウスの誰よりも大きい声に、全員が口を噤む。
叫んだマリを見れば、彼の頰をぽろぽろと大きな雫が伝っていた。
「・・・聡ちゃんが、・・・どんな気持ちで聞いてると思ってるの・・・?」
マリに支えられて立つ聡を見れば、彼の焦点のあっていない瞳がぼんやりと床のあたりを彷徨っていた。
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かなで - mauさん» 自称mau様の1番弟子ですので(笑)完結まで必ず着いていきます(^^)私は九州在住なので、今回は影響ありませんでした。ご心配いただいてありがとうございます!九州人は台風に慣れてしまってる所があるので、今回改めて怖いなと感じました。1日も早い復興を願っています。 (2019年10月17日 7時) (レス) id: 98c4d0d304 (このIDを非表示/違反報告)
mau(プロフ) - かなでさん» かなでさんは、この物語の中の彼らを、1番見守っていただきたい方ですから…。 かなでさんはご無事ですか?今回の台風で、各地で相当な被害が出ているので、勝手に心配しておりました。またお話できて本当によかったです。長文失礼いたしました。 (2019年10月17日 3時) (レス) id: 056926957e (このIDを非表示/違反報告)
mau(プロフ) - かなでさん» いつも本当にありがとうございます。この先の展開が少し怖いとお言葉がとても心に響きました。もちろん悪い意味ではありません。ただ、確かにこの先は、人によってはハッピーエンドではないのかもしれません。それでも、5人を最後まで見守っていただけますと幸いです。 (2019年10月17日 3時) (レス) id: 056926957e (このIDを非表示/違反報告)
かなで - 更新ありがとうございます(^^)聡ちゃんの気持ちを思うと、胸が痛くてたまりません(T-T)この先どんな展開になるのか、少し怖いです。台風の被害があった場所にお住まいなのですね…ご無事との事で安心しました。次の更新も楽しみにお待ちしています。 (2019年10月15日 19時) (レス) id: 98c4d0d304 (このIDを非表示/違反報告)
mau(プロフ) - sz all担さん» わざわざご返信ありがとうございます。地域的には相当な被害がありましたが、私自身無事でしたのでご安心ください(^^) 今回もお読みいただきありがとうございます。またすぐお読みいただけるよう更新のほうも頑張りたいと思います。よろしくお願いします。 (2019年10月13日 15時) (レス) id: 056926957e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mau | 作成日時:2019年4月24日 23時