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耀哉は何も言うことが出来なかった。返す言葉がない。どう言えば良いか分からない。
耀哉にとって、それは初めての感覚だった。桜士郎は初めて会った時から、藻掻けば藻掻くほど沈んで行く泥沼のような、深い深い心の闇を持っていた。
何を言っても彼の心には届かない。耀哉であるからこそ、皆のお館様であるからこそ、桜士郎は無意識にその言葉を純粋に受け止められなかった。


そのどうしようも無い泥沼から、彼を救い出してくれたのが胡蝶 しのぶまた胡蝶 カナエであったのだ。






あれから桜士郎はカナエの墓に一礼し、耀哉に「次へ急ぎましょう」と催促した。そこから彼は終始無言のままだった。
耀哉は自分が悪手を打ったことに酷く後悔していた。彼が進むには必ず通らなければ行けない道。しかし、それは桜士郎にとってまだ早かった道だった。


彼の表情はいつもの無表情のままで感情は読み取れない。耀哉はまず謝罪をするべきだろうと考え、口を開こうと────


「貴方様が気に病む必要はありません」


否、それは桜士郎によって未然に防がれた。



「私が、貧弱なのが原因なのです。だから、謝るのは辞めて下さい」



「気にしてませんから」と彼は耀哉に笑顔を向けた。しかし、耀哉の胸は締め付けられる一方だった。
桜士郎はとにかく、感情表現の苦手な男だった。弱味などは一切見せず、甘えることもしない。今でこそ大分マシになったが、昔は冷酷な男と言われていた程だ。

そんな彼が笑うのは余りにも不自然である。一般の人間なら気付かないほどの精巧な作り笑顔に、一体どれだけの感情が押さえ込まれているのだろうか。
耀哉は考えるだけで心苦しかった。



「そんなことよりも先程の話しの続きを。竈門 炭治郎の話しをお願いします」


「…………そうだね、すまない。桜士郎、君には炭治郎の監視役として彼の任務に同行して欲しい。」


「……監視役」


「うん。禰豆子が人を喰らっていないとはいえ、まだ不確定要素が多い。とは言えこれは隠密に進めるべきことだ。柱をその任に就かせる訳にはいかないしね」


「…………その任務、確かに私が適任ですね。承知致しました。──但し、条件が一つ」


「……何かな?」


「もし禰豆子が人を喰らう可能性があると私が判断した場合は────」



──────────────
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設定タグ:鬼滅の刃 , 胡蝶しのぶ , 男主   
作品ジャンル:恋愛
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天霧(プロフ) - とても面白かったです。ハールメンで見させて貰います。 (2021年9月26日 1時) (レス) @page17 id: 8490818b21 (このIDを非表示/違反報告)
しとは(プロフ) - いおりさん» 前作からと長々この作品をご閲覧頂きありがとうございます!部活の大会や模試などが立て込み、中々更新出来ずにすみません。ですが、これからも応援して頂けると嬉しいです。よろしくお願いします! (2020年1月16日 7時) (レス) id: 076c798201 (このIDを非表示/違反報告)
いおり - 前作から来ました。今作もすっごい面白い、、、。これからもお体に気をつけて更新頑張ってください。楽しみに待ってます。 (2020年1月13日 17時) (レス) id: 74a65ddbfb (このIDを非表示/違反報告)
しとは(プロフ) - そう言って貰えると、良かったぁってなります。ありがとうございます!了解です。前作は残していく方向で行きます!更新頑張ります! (2020年1月5日 11時) (レス) id: 076c798201 (このIDを非表示/違反報告)
Sara.(プロフ) - 面白すぎて一目惚れしました。大好きです前作残して欲しいですす更新頑張って下さいぃぃ! (2020年1月4日 23時) (レス) id: 37e203d48e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しとは | 作成日時:2019年12月12日 1時

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