眼鏡をベッドサイドに置いたら

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「ソファーどうぞ」

ソファーと言えども小さめの二人がけでは狭くて、密着するのは恥ずかしいので中村さんだけソファーへ誘導する。
Aは床に座る。


ふう、と小さく溜息をついた。


「わたし知りませんでした」

中村さんが小さく頷く。

「マァくん」

ふははと中村さんが笑う。

「笑うところじゃないです！」
「そうだねごめんごめん」

そう言いながらも中村さんは笑っている。


「どうして教えてくれなかったんですか？」


中村さんは少し口籠った。
ビールを口に含んで少し考えていたようだった。



「Aちゃんに偏見を持って俺のこと見て欲しくなかったんだよ。」

Aは首をかしげる。



「俺の周りには、俺が俳優だ有名人だって理由で俺に近づいてくる女の子がいっぱいいる」
「いっぱい、ですか？」
「まあ、嘘じゃないよね。いっぱいいる」

Aは溜息をつく。

「でもAちゃんがそういう理由で近づいてきて火傷しちゃ可哀想だからさ」

中村さんがヘラヘラと笑う。
Aはまた溜息をついた。



「なんてのは冗談だけど、当時未成年だったAちゃんの未来を潰しちゃいけないと思った」
そのまま中村さんは続けた。
「俺は大学を卒業できなかった。だから、Aちゃんには勉強したり、やるべきことやりたいことに一生懸命になってほしかった。」



いつもは可愛い中村さんが、大人の横顔をしていた。




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