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君と小説が。 ページ5

桜庭A。
俺はこの人間の小説がこの世で1番、誰よりも大好きだ。
そして、彼女の小説を読んだが最後、彼女以外の小説を読むことが退屈で仕方が無くなってくる。

何故なら、彼女の小説には世界がある。
読んだら実際に目の前にその世界が広がり、色が付いて行き、登場人物の声が出て、動き出す。
想像も容易いことだろう。

ページを開けば弾けるようにして世界が色付き、そのページを捲る度に心踊りその世界の住民となる。

そんな小説と俺は出会って来なかった。
そしてこれからも出会うことはないだろう。
こんなにも素晴らしい、美しい、繊細な小説が何故こんなにも評価されないのか不思議なほどだし、もしも彼女が小説を投稿しているサイトで低評価をしている人間はただの嫉妬じゃないかと思う。

彼女の小説に読み耽っていると、乱雑に部屋の扉が開けられる。
何かと思えば涙でぐちゃぐちゃになった体裁なんて気にする様子も無い最愛の彼女の姿だった。


「どっ、どしたん!?A!?」


ただえぐえぐと泣きじゃくる彼女を抱き締めて、背中を擦ってやることしかできない。
無理に事情を聞きだすより落ち着いてからの方が良いだろう。


「ゆ、ゆっ、……!ゆう、!何で…?もう、私しょうせ、つ書かな、い…っ、書けない…っ読みたく、もない、いやだぁっ!」


成人している女性が子供に戻ったかのように泣きじゃくるなんて珍しい光景だと思うが、彼女がこんなに泣きじゃくるのはもっと珍しかった。


「なんで、何があったん?」

「もう、いやっなの、…!私は、しょうせつ、書いた…らだ、めなんだって!」

「そんなことない。Aの小説は世界一やから。だからそんな事言わんで?」


優しく諭すように声を掛け、背中を赤子をあやすようにそっと撫でれば、たちまちAの精神状態も落ち着いて穏やかになる。

落ち着いた彼女から話を聞けばまた作品に低評価が入ったとのこと。
先日投稿した自信作よりもかなりの自信があって投稿したにも関わらず、作品を読まれない内に低評価をされ、作者として情けなくなった、生きるのが辛くなった。と。
黙って慰めることしかできない、ただの読者の俺はどうにもできない。

ただ、彼女にその小説が「好き」だと伝えることしかできない。


「ごめんな。A。俺Aの小説が大好きってことしか伝えられへん。不甲斐なくてごめんな」


そんな頼りない言葉に返って来たのは意外な言葉だった。

小説が好きだと伝えられること。→←また。



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ちょこ - とてもよかったです!二人のその後話が欲しい! (2019年12月11日 1時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 初コメ失礼します!語彙力が壊滅的にないので一言で言わせてもらいます()ものすごく感動しました!これからも執筆(?)頑張ってください!! (2019年6月5日 22時) (レス) id: eaf14dff11 (このIDを非表示/違反報告)
shizukuraitosor(プロフ) - う…わぁ…これ…すごい…感動しました…(なんか、語彙力なくてごめんなさい…) (2019年5月30日 18時) (レス) id: 4dff7efeca (このIDを非表示/違反報告)
どんにゃす(プロフ) - 素敵なメッセージも入っていて面白かったです。これからも頑張ってください! (2019年5月24日 15時) (レス) id: d8dc6de289 (このIDを非表示/違反報告)
鎖座波(プロフ) - 空っぽのコップさん» わぁぁありがとうございます(; ;) 伝わって良かったです……!これからも頑張らせて頂きます! (2019年5月24日 12時) (レス) id: a183fb70e9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鎖座波 | 作者ホームページ:夜桜月  
作成日時:2019年5月23日 19時

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