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私と坂田と小説と。 ページ3

「ねえ優。これから小説を辞めてどうやって生きて行けばいいと思う?」


何気ない質問だった。
何気ない低評価と同じように何気なく質問した。
赤色の髪が揺れて、ガーネットの瞳が悲しげに揺れた。


「そんな…そんなこと、言わんでや」

「何で?私が小説書く意味なんて無いじゃん。私が小説を書かなくなった所でこの世界は何も変わらないよ?」


私たった一人が小説を書かなくなった所でこの国は普通どおり機能するのだ。私が小説を書かないだけで何も変わることはない。私が人生を終えた所で何も変わらない。
どうせなら、あの国のトップの若い男の人よりも国を揺らすぐらいのお話が書きたかった。
否、先日の作品にはそれ程の自信があった。
それなのに心無い人間の目にしか止まらず、その作品がより多くの目に止まることは困難になった。


「あのな、俺はお前の文章が一番大好きやねん…お前の文章書く姿に惚れて、お前が書く小説以外何か空っぽに見えてしまうねんて」

「何で?私なんかより面白いものあるじゃん」

「違う、違うって!だって俺お前の文章以外読めへんなったもん!お前の書く文章が世界で1番好きなんやって!他の誰よりもお前の文章を愛してるんやって!」

「え、あ、えと……」


まるでプロポーズみたい。
私の文章へのプロポーズ。

だけれど、やはり考えてしまうのだ「やっぱり小説書いたらダメなのかな」と。
あれほどにまで拒まれては小説を書くなと言われている様な気がする。
あんなに頑張ったものすら否定されるのだから、私に小説を書く権利はないのか。人権はないのか、と考えてしまう。


私は恥ずかしくなって熱くなった頬を抑えた。目の前に居る赤髪の彼も同様に赤くなって「いや、あの…」だなんてよく分からない日本語を零していた。


「ええか。A、絶対小説は書け。お前にはその才能がある。お前は小説に愛されてるんや。今度コンクールに参加しよう。同じようにサイトに出そう。そして1位でも取ったら俺から言いたいことあるから絶対取ってや」

「…?意味が分からないんだけど……」


言いたいこと、だなんて今この場で言えばいいのにと思いつつも分からないながらに頷く。
本当に、私の心をこうもすぐに回復させてしまうのは彼の力だ。彼が居なければ私はこうして小説を書き続けて居なかったかもしれない。

一度「筆を折る」と言う選択肢を選んだものの、小説を書くことが、人生が楽しくてやめられないようで。
私はもう一度だけ文章を書くことにしてみた。

また。→←小説と生きている。



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ちょこ - とてもよかったです!二人のその後話が欲しい! (2019年12月11日 1時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 初コメ失礼します!語彙力が壊滅的にないので一言で言わせてもらいます()ものすごく感動しました!これからも執筆(?)頑張ってください!! (2019年6月5日 22時) (レス) id: eaf14dff11 (このIDを非表示/違反報告)
shizukuraitosor(プロフ) - う…わぁ…これ…すごい…感動しました…(なんか、語彙力なくてごめんなさい…) (2019年5月30日 18時) (レス) id: 4dff7efeca (このIDを非表示/違反報告)
どんにゃす(プロフ) - 素敵なメッセージも入っていて面白かったです。これからも頑張ってください! (2019年5月24日 15時) (レス) id: d8dc6de289 (このIDを非表示/違反報告)
鎖座波(プロフ) - 空っぽのコップさん» わぁぁありがとうございます(; ;) 伝わって良かったです……!これからも頑張らせて頂きます! (2019年5月24日 12時) (レス) id: a183fb70e9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鎖座波 | 作者ホームページ:夜桜月  
作成日時:2019年5月23日 19時

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