【銀魂】空から女の子が降ってきました。20

第八百三訓 ページ37

将ちゃんの訃報は、怒涛の勢いで行われた。


たったの数日間で新聞は死亡の旨と、政権交代の旨が報道された。そして世間は荒れ狂い、民衆は困惑し、目まぐるしい勢いで歴史が変わった。






『……。』






信じたくなくても、信じられなくても、現実は残酷なくらいそれに構ってはくれない。振り返ってくれることはおろか歩みを止めてはくれない。


一橋喜々が将軍へと着いたこの状況で泣いてなどいられないし下手したら私達も潰れてしまう。





だから。





だから、










『………っ、ふ、』










早く立ち直らないといけないのに。
将ちゃんに続いて江戸まで失う訳にはいかないのに。

私達が江戸を守ると誓ったのに。なのに。





(………無理だよ、)





＿＿＿＿＿失ったものがあまりにも、大き過ぎた。







土方「……A」



『！っあ、トシ…』






屯所の中の空気も暗い。トシも近藤さんも総悟も一見何ともないように振舞っているが、私を元気づけようとしてくれているが、


悔しいのは、悲しいのは、明白だった。






土方「葬儀はすぐ行われる……お前の事だ、参列するんだろうが…今はゆっくり休め」



『っ、はい……』






将ちゃんの為に戦って大勢の人間が死んだ。皆、全てをかけて戦ったんだ。他でもない将ちゃんの為に。

嗚呼、嗚呼、悔しいな、悲しいな。なんだろうか、この埋まらない喪失感は。満たされない。悲しい、痛い、苦しい、憎い。






『＿＿＿＿＿っ、一橋……！！』






天導衆と、一橋喜々。
トシが出ていき一人になった静かな部屋の中で、将ちゃんを殺した彼等の名前を反芻してみる。



＿＿＿＿やはり、やはりだ。



どうも彼奴らに憎しみが湧いて、仕方がない。然るべき報いを受けさせたいと体が怒りで疼いている。





(駄目だ、抑えなきゃ。立場的に私は今何も出来ない。真選組に一橋達の矛先が向けられたら一溜りもないから……何も出来ない)






『っ、』






＿＿＿＿＿＿抑えなきゃ。






『………っ、将ちゃ、ん、』






(………まだ彼の遺した遺書(手紙)も、見れてないのに。こんなに胸が痛くて、どうすればいいのかな)






ぎゅっ、と胸の部分を抑えて蹲り、縮こまる。こんな事しても痛みは消えないと分かりながらも。


するとその身動ぎによって服が擦れたのか……かさり、と将ちゃんの遺書が音を立てた。









まるで、読んで欲しいとでも言っている様に。











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