第七百八十九訓 ページ23
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蛾の想い。
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随分と美しい女だな、と最初はそう思った。
敵ながら儚く芯が通っていて。だというのにイカれていて魂が綺麗で。俺がお前に惚れたのも一種の羨望で。
____俺には、眩しくて仕方なかった。
目の前で俺を守るようにして、こちらに背を向け立ちはだかる彼女に思わずぐっと目を細めた。
お前はいつもそう。眩しいくらいに魂が美しい。俺はお前という光に集う蛾か、お前という華に集う蝶といったところか。
そして銀時から聞いた。コイツも俺たちと同じ様にあの先生の教えを受け、学びを解き、色々な事を教わった弟子の一人だと。
俺達の、妹弟子にあたるのだと。
そして……クソみたいな環境下、先生だけが頼りだったのだと。
そう、聞いた。
まあ、もしかしたらそうなんじゃねえかと思った事はあったんだ。何だかAの言動や考え方、ふとした仕草、そして…信条は。
(先生に何処か、似ていたから)
でもやはり彼女は先生よりも脆く壊れやすく見えた。
……当たり前だ。だって彼女は先生が唯一だった。そしてそれを喪い、孤独だった。俺達がそうさせた。
「っ、」
___俺達のせいだ。
先生を失ったのもお前が孤独になったのも死を求めるようになったのも全部全部。
嗚呼、嗚呼。なんだってんだよ。何で兄弟子である俺達が守ってやらなきゃならない筈の妹弟子から先生奪ってんだよ。
どうして。
どうして銀時は。
どうして俺は。
どうして俺は___恩を仇で返す様なマネしかできなんだ。
子供みたいに喚いて。先生に縋って。銀時にその咎を背負わせて。挙句惚れた女に護られる。
『………来ない方が、良かった?』
(……当たり前、だろうが。見られたくなかった、こんな汚い俺を)
笑いかけないでくれ。守らないでくれ。こんな俺を兄弟子と呼ばないで。俺はそんな大層な資格なんざねェ。
責めてくれ、蔑んでくれ、お前らのせいで先生がと悪態をつけばいい。その綺麗な魂を俺に向けるな。
憎んでくれた方が良かった、お前のその鋭い
結局の所俺は、誰かに許して欲しかっただけだった。誰かに先生のように抱き締めてもらいたかったのだ。まるで子供のように。
____先生。
______今からでも、俺は。
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RENKA - 初コメ失礼します、感動しました号泣です涙止まんないです!!心がキュンキュンしました!!もうキュンキュン通り越してギュンってなりましたよ!← これはホント何回みても飽きないですマジで!!最高っす!!!ってことでちょっともう1回読んできますね(( (2022年7月5日 11時) (レス) id: 345a1df315 (このIDを非表示/違反報告)
ミウラ(プロフ) - 涙止まんなすぎてバスタオルで拭きました最高ですめっちゃ感動しました!!!!! (2022年7月4日 21時) (レス) @page41 id: 3103cb23ea (このIDを非表示/違反報告)
実珠(プロフ) - イルさん» 将軍暗殺篇はこれにて閉幕です、NEXTとしてはさらば真選組編ですね!!ハンカチのご用意を……w結構心理描写が精神的に来るものがあると思われますです……更新頑張ります!将軍暗殺篇ありがとうございました!! (2022年7月4日 21時) (レス) id: 2209f9ef43 (このIDを非表示/違反報告)
実珠(プロフ) - 雑草のかきあげ(仮垢)さん» 最初からw!?!かなり長いですよ!?w大丈夫ですかほんと無理しないでねw!?!更新頑張りますw将軍暗殺篇ありがとうございました!! (2022年7月4日 21時) (レス) id: 2209f9ef43 (このIDを非表示/違反報告)
実珠(プロフ) - つなかんさん» いやこちらこそぎゅんぎゅんして頂いた様で(?)良かったです、更新ノロマですが宜しくお願いしますw!! (2022年7月4日 21時) (レス) id: 2209f9ef43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:実珠 | 作成日時:2022年5月3日 15時