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ゾムさんが部屋に戻ると、入れ替わりで最後にリビングにやってきたのはコネシマさんだった。
kn「A、まだ起きとったんか」
「…コネシマさん」
kn「あのさ、A…髪乾かしてくれへん?」
「良いですよ。コネシマさん、前に座ってください」
コネシマさんにそう返事をすると、コネシマさんが私の前に座った。
私はドライヤーの電源を入れるとドライヤーの温風を当てながら、コネシマさんの髪を手櫛をしながら乾かしていく。
コネシマさんのお日様のような綺麗な金色の髪に触れるだけで、胸の鼓動が急に加速を始める。
kn「…やっぱAはオカンやわ」
「コネシマさん、それ最後まで引っ張るんですね」
kn「まぁ、ええやんか。俺はAと違って両親とは良い思い出があんまり無いねん」
コネシマさんがスカイブルーの瞳を細めながらケラケラと笑い冗談混じりに言うけれど、そんなの全然笑えない。
コネシマさんとの出会いのきっかけは他の人には信じられないかもしれない。
まさか聞いたことも無い、地図には存在しないW国という国から来たのだから。
これはきっと、神様が私とコネシマさんを巡り合わせてくれたのだろうか。
コネシマさんは両親の話題になると気を遣ってくれたり、仕事の帰りが遅い時は職場まで迎えに来てくれた。
私が熱を出して夢見が悪かった時は、傍でずっと手を握ってくれていた。
コネシマさんには何度助けられただろうか。
私にとって“コネシマさん”という存在は、いつの間にか私の中で余りにもとても大きくなり過ぎてしまっていた。
ショッピくんに言われた通りコネシマさんとは二度と会えなくなるかもしれないのに、本当に気持ちを伝えずにこのまま終わってしまっても私は良いのだろうか。
先程、鬱さんが言っていた言葉を思い出す。
『僕はな、誰よりもシッマに一番幸せになって欲しいねん。それにAちゃんにも幸せになって欲しいねん。この意味分かる?』と鬱さんは言っていた。
分かりたくもなかった鬱さんの言葉が、何度も何度も呪文を唱えるように頭の中で繰り返される。
皆が口を揃えて言っていた、…私が後悔しないようにと。
私の幸せとは何だろうか。
コネシマさんたちが無事にW国に帰れば私はそれで良い。
「…コネシマさん、髪乾きましたよ」
kn「ん。ありがとうな、A!」
色々と考えているうちに、コネシマさんの短い髪はいつの間にか乾いてしまっていた。
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