夜はまだ明けない 【冨岡義勇】

番外編 ページ36

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結婚の祝いにとAが柱である胡蝶しのぶに昼食をご馳走になっていると、もちろん聞かれるのは義勇からの求婚の言葉、婚礼の儀はどうするのか、など、つまり根掘り葉掘りだった。

「…え、儀はあげない…？」
「はい。お互い忙しい身ですし、私自身も照れがあると言いますか…」
「…。まさかAさん、あまり乗り気ではない冨岡さんに、遠慮してます？」
「いえいえ、まさかそんな！」

慌てて首を横にふるAを訝しげに見たしのぶは、「私から冨岡さんに、ガツンと言って差し上げます」と笑顔になって、Aが心の中で義勇の身を案じたところで、その日の昼食はそこでお開きとなった。

＊＊

久々に重なったお互いの休みで、Aと義勇が屋敷でのんびりとしていると、それを打ち砕くように突然至急の招集がかかり、慌ててお館さまのお屋敷へと向かうことになったのは、しのぶと会ってからすぐのこと。

「…来たな」
「え、不死川さん？」

お館さまのお屋敷に着くと、待ち構えていたかのように立っていた不死川に義勇は連れ去られ、Aが驚きのあまり立ち尽くしていると、義勇たちと入れ違うように現れたしのぶに訳も分からず手を取られ、お屋敷の奥へと案内される。

「少し、辛抱してくださいね」

なにが、と聞く前に突然塞がれた視界、そのまま歩かされた先で服を剥ぎ取られ、何が何だか分からないままAは何か重い服に着替えさせられているようだった。

「絶対に、目を開けてはいけませんよ」
「…はい」

ここまできたら為すがままいるしかないと腹をくくったAは、何やら化粧を施されているような気がする顔を動かさないように努めながら、また、せっかくのお休みに義勇さんとゆっくり出来なかった…と内心肩を落とす。

「Aちゃん、髪の毛失礼するね〜」

結局何が行われているのかという言及はなされないまま支度が終わり、許しを得て目をゆっくりと開けると、目に飛び込むのは「綺麗…」と微笑むしのぶと蜜璃の顔。
よく見ると、その二人が纏っているのは婚礼の時などに着用する正装で、そういえば一瞬会った不死川も正装をしていたな、と気付いたAは不思議そうに首をかしげると、白い何かに視界を遮られる。

「ああっ、頭を動かしちゃダメっ」
「皆さんお待ちかねです。参りましょうか」

再びしのぶに手を取られたAは、着物の裾を踏まないようにゆっくりと足を踏み出した。

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