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それからというもの義勇とはさらに顔を合わせない日々が続き、鬱々とした日々を過ごしていたところ、Aのもとに炭治郎が任務で大きな怪我をしたということと、炭治郎と義勇が隊律違反を犯したという知らせが届いた。
「隊律違反…?」
「オニノネズコヲツレタタンジロウ、オニヲカバッタギユー!」
「…、」
鬼を庇った義勇。そのカラスの言葉に、Aは彼の不器用な優しさを思い出して胸が苦しくなる。
「タンジロウハチョウヤシキー!」
カラスのその声に慌てて屋敷を出たAは、蝶屋敷に着き出迎えてくれたアオイに挨拶をして、炭治郎の居場所を聞く。
「…ああ、お見舞いですね。ご案内しますよ」
炭治郎の声がする部屋の前で立ち止まったアオイは、「こちらです」と言ってすぐにその場を離れてしまうが、またすぐに立ち止まって、「用がなくても、たまには会いに来てください」と眉を下げながらAに声をかける。
鬼殺隊に入ってから幾度となくこの蝶屋敷とアオイにはお世話になっており、いつも自分を気にかけてくれるアオイの優しさに、Aは何度も救われていた。
「そうだよね。…ごめんね、なかなか会いに来なくて…」
「…。顔色が悪いです。しっかり休養はとってくださいね」
そう言って今度こそその場を離れるアオイを見送って、Aが静かに戸を開けると、驚いた表情をしている炭治郎と目が合う。
「…A!」
「炭治郎。怪我の調子は…」
笑顔でベッドから立ち上がった炭治郎は、すぐに「いてて」と言ってまたベッドに座り込む。
「大丈夫?無理しないで…」
そう言いながら炭治郎に駆け寄ろうとして、Aは足元で寝転がる禰豆子の存在に気付いて、そのまま禰豆子に近付く。
「無事だったんだね、禰豆子ちゃん」
「ああ。…俺、まさか俺たちのために、鱗滝さんや義勇さんが命をかけてくれているなんて知らなくて…」
「え?」
禰豆子の頭を撫でていた手を止めてAが顔を上げると、「え、…ごめん、知らなかった、…のか?」とAと義勇が恋仲になったことまでしか知らない炭治郎は、戸惑ったように何度も瞬きをする。
「…知らなかった。…そっか、炭治郎と禰豆子ちゃんのために命を…」
なら、義勇にとって私の存在は何だと言うのか。
義勇を失いたくないという私の気持ちは、無かったことにされるのか。
そんなことが頭の中をぐるぐると回って、思わず溢れる涙を、Aはこらえきれなかった。
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チーズ(プロフ) - レインさん» コメントありがとうございますー!!不器用、じれったいをモットーにして書いたものなので、そう言っていただいて嬉しいです。最後まで読んでいただきありがとうございます! (2019年12月17日 21時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - 義勇さん不器用すぎていつ、くっつくんだ!早くくっつけ!クソッ!!見てるこっちがなんかアレだ!!(語彙力) 面白い!! 完結おめでとうございます! (2019年12月17日 20時) (レス) id: 05e6c43b69 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - たまごさんさん» 最後までお付き合い頂きありがとうございます!!そうだったんですね!嬉しいです!次作でもどうぞよろしくお願いします! (2019年12月1日 7時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
たまごさん(プロフ) - はああ・・・やはり良きです・・・完結おめでとうございます!!無惨様の作品は知らず知らずのうちに見ていました!!好きだなあと思って、作者誰だろ?と下にスクロールしたらまさかの・・・。僭越ながら次作でも応援させていただきます!! (2019年12月1日 0時) (レス) id: 8760f7a678 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - orangeさん» こちらこそ、最後までお付き合い頂きありがとうございます!ぜひ書かせていただきます(^^)もうしばらくよろしくお願いします! (2019年11月30日 23時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チーズ | 作成日時:2019年11月13日 13時