あのね (ページ8)

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「……先生って、絵とか描くんですか？」

「俺？描かへん。ぜーんぜんセンスない。
けどな〜、美術の先生に顔は綺麗やのにセンスは0って言われたわ、高校のとき。」

「顔……？」

うっかり口に出してしまって、ハッとした。

「え？なんなんなん、顔、そんな気になる？もしかして俺のこと好き？」

「えっ！？ないです！！」

「うわ〜、めっちゃ全力で否定された〜！へこむわ〜〜。」

先生はおどけて胸を押さえながら、ふにゃっと笑う。
その顔は本当にチャラくて、本当に軽い。

でも、そのあとすぐに真面目なトーンで言った。

「でもな、色ってさ、“正解”ないんやで。
自分が“これや”って思った色が、正解やと思ったらええねん。それが“自分の目”やからな。」

一瞬だけ、真っ直ぐな声。
目も、さっきまでの軽さと違ってて。

｢先生ぽいこと言うんですね。｣

私の可愛くない一言を聞いて一瞬目を丸くして見つめたかと思いきや、ふふと笑い

「Aちゃん結構繊細やしな〜。考えすぎやわ。」

ぽん、と頭を軽く撫でられて、私は思わず固まる。

「……な、なんでわかるんですか」

「そらわかるよ〜。俺、教師やし？伊達に生徒見てへんしな？」

またあのニヤとした笑みを浮かべてた。
でもなんでやろ――ちょっとだけ、嬉しかった。

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