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入学してから1ヶ月が過ぎた頃。
クラスの雰囲気も柔らかくなり、私は絵を描くのが好きということもあり美術部へ入部した。
部活きっかけで仲良くなった同じクラスの菜美。
地毛で茶色っぽいショートボブに、ちょっと吊り目でキリッとしたお顔。でも笑うとふにゃと崩れるそのギャップが可愛い。
窓から差し込む光が、絵の具の瓶の中で揺れてた。
部屋の中は静かで、筆が紙をこする音と、水の音だけが聞こえる。
｢まだ顧問の先生こーへんのかな〜。｣
そうつぶやくと、隣の席の菜美がくすっと笑った。
｢もう来てるで。なんならあそこで寝てるやん。｣
菜美が指さす方に顔を向けると、ロッカーの横にあるソファに横になっている人を見つけた。
近づいて見ると白いシャツに黒のスラックス、袖をまくって、肘で頭を支えるようにして、寝息を立てている末澤先生を見つけた。
起こそうと近付いてみると
耳元に、入学式ではなかった小さなゴールドのフープピアスが光ってる。
首元には、制服の襟から少し覗くチェーンのネックレス。
教室では見えなかった部分が、
ちょっと無防備にさらけ出されていて
(……なんか、男の人っぽい)
意識してしまった瞬間、胸がふっと高鳴った。
この胸の高鳴りはなに？
てか、先生のくせにチャラいしピアスなんか付けてていいの？
そもそもなんで末澤先生？だって先生ってどう見てもスポーツ部の顧問だと思ってたし、放課後なんてバレー部かバスケ部で笛吹いてるイメージだったのに。
色んな疑問を頭で考えてると、
「え、先生って……美術部の顧問なんですか？」
思わず声に出してしまった。
私の声を聞き目を覚ました末澤先生は眠たそうにあくびしながら体を起こし、髪をくしゃっと手でとかす。
「うん、そうやけどなんでそんなびっくりしてんの。俺も見た目だけやとよく“バスケ部顧問ですか？”とか言われんねんけどな。」
先生は、ちょっと苦笑いしながら立ち上がり
何気なく机の上に置いてある生徒が描いたスケッチブックをパラパラめくっていた。
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作者名：愛生 | 作成日時：2025年6月9日 1時
