包み込むように柔らかく ページ25
『今日は少しだけ試作品も作ってみようと思うんです』
深夜。厨房に連れてきてもらった私は、厨房の中にある食材を確認してからそう言った。
「闇雲に作らないんじゃなかったのか」
『闇雲には作りませんよ。いくつか試食もして頂きたいのですが…っと、すみません。カタクリ様、深夜帯は食事を避けられていたりします?』
「少量ならば構わない」
『良かった。お話しながらの作業で構いませんか?』
「…好きにしろ」
『そういえば、カタクリ様は普段スイートシティにはいらっしゃらないんですよね?』
「ああ」
『【近々大きなお茶会がある】と仰ってましたけど…お茶会には他の御兄弟も?』
「そうだ」
話題を振ってみると、カタクリ様は思ったよりきちんと返事をしてくれる。
真面目というか律儀というか。お話出来なくなっては困るので、口にせずに心の中でそっと微笑む。
『一族の方は沢山いらっしゃるんですよね。確か100人以上でしたっけ。ご親戚を除いたら…』
「親戚?129人でひとつの家族だ。おれには兄と姉、それから44人の弟と38人の妹がいる」
『えっ!?そ、そんなに沢山…!』
44人の弟と、38人の妹。まったくもって実感が沸かない単語だ。
―ああでも。
ふと心に浮かんだものを確かめる為に、私はカタクリ様に質問をぶつけてみる。
『…沢山下に御兄弟がいて、大変ではないですか?』
「大変なものか。皆おれの可愛い弟と妹達だ」
『!』
―ふわりと。目元が今までで一番優しく細められた気がする。
想像以上の威力にドキッとしたけれど、それ以上に心が温かくなる。
『…やっぱり。ふふ、そうなんですね』
「…何がおかしい」
『いえ、やっぱりカタクリ様は素敵な方だなと思って。…お兄ちゃんですね、カタクリ様は』
「…兄は兄だろう」
カタクリ様の優しさの理由に少しだけ納得しつつ、私はお皿に出来上がったベルリーナーとチュロスを盛り付ける。
「何だそれは」
『ベルリーナーとチュロスです。ドーナツの一種なんですけれど』
「チュロスはチュロスだ。ドーナツは、穴が開いているものだろう」
納得がいかないと拗ねたような顔。
穴が開いているものが、ドーナツ。
『っふ、ふふふっ!わかりました、カタクリ様がお好きなのは穴の開いているドーナツですね!』
「今度は何だ!」
『お兄ちゃんだけど、ちょっとだけ弟みたいだなって』
「…?」
貴方に贈るのはきっと、その愛情のような、包み込むように柔らかいものが良い。
…本当に、どこまでも可愛い人!
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雪見もち(プロフ) - 最近カタクリ様などハマりした女でしたが露木様の素晴らしい作品により一層好きが溢れて、ずっとニヤニヤしながら拝見させて頂きました!二週も読み直したお話は初めてです…!本当に素敵な作品をありがとうございました!! (2020年7月25日 20時) (レス) id: fce5f8b205 (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - 車輪さん» 車輪さん、ワンピースの世界へお帰りなさいませ!カタクリ様にはまられたとのことでおめでとうございます!(?)こちらこそ、出会ってくださってありがとうございます…!嬉しいお言葉ばかりで、読み返してくださるなんて感激です;;コメントありがとうございました…! (2020年4月25日 0時) (レス) id: 0b597cfcac (このIDを非表示/違反報告)
車輪(プロフ) - 数年追えていなかったワンピースを最近また追い始め、カタクリにドはまりして小説を漁っていたところこの作品に出合いました。続編も含め本当に面白かったです!読み終えてすぐに読み返しに入った夢小説はこれが初めてです。この作品に出合えて本当によかった…! (2020年4月24日 20時) (レス) id: b8a796d02f (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - ヒロさん» ヒロさんコメントありがとうございます!尊いなんて嬉しいです;;ありがとうございます(;ω;`)もっともっとハッピーになるように頑張りますね! (2019年9月22日 9時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
ヒロ - 読んでる間に尊さで何度昇天しかけた事か…………!こんなに尊い小説初めて読みました!最後のハピエンで無事尊死しました( ˘ω˘ ) (2019年8月17日 5時) (レス) id: a8a8fc489f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:露木アマナ | 作成日時:2018年6月8日 0時