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優しいキモチ ページ23

「おい」

声が聴こえるとしたら一人しかいない。
けれど、私は予想以上に早く現れた姿に目を丸くした。

「…なんだその顔は」
『てっきり、そのままお仕事に行かれたのかと思っていたので…』
「…そう出来れば良かったがな」

そう言うと、突然カタクリ様の手から何かが降ってきて私に被さった。

『わっ!…って、これお布団…ですか?』

被さったものから抜け出すと、それはふかふかの布…つまるところのお布団だった。

「今後はそれを使え」
『えっと…』

そこまでしてもらっていいんだろうか。

「お前が死ぬのは2日後だ。それより先に死なれては困る」
『…』
「…何か言ったらどうなんだ」

呆気にとられたまま、カタクリ様の言葉を反芻する。そして。

『それは…少しでもドーナツを楽しみにして下さっているということですか…?』

つい、お礼より先にそんな言葉が出てしまった。
まず謝って、お礼を言わなきゃいけないのに。

「……ここまで付き合わせられているんだ、多少はな」

―言わなきゃ、いけないのに。

『本当ですか!?ありがとうございます…!』

それは間違いなく、お布団に対するお礼ではなかった。
察されてしまったのだろう。カタクリ様が呆れたように息を吐く。

「…いい加減食事も摂るべきだが、ひとまずこれで我慢しろ」

カタクリ様が小さなおもちを作り出して私の手に乗せる。しかも水の入ったボトルつき。

『よろしいんですか…?』
「良いからやっている。手間をとらせるな」
『は、はい。では有り難く…はむっ』

丸々としたおもちにかぶりつく。
1日ぶりの食事ということもあったけれど、これは―!

『美味しいです!柔らかくて、もちもちで…!』

私は申し訳なさをすっかり忘れて、美味しさに目を輝かせた。

『それに、とっても優しい甘味があって…!これはカタクリ様でないと作れないんですよね?すごい、すごいなあ…!』
「いちいち大袈裟な奴だな」

なくなってしまうのが勿体なくて、半分になったおもちを見つめる。

『…悪魔の実って、食べた人に似たりするんでしょうか?』
「?何の話だ」
『なんとなく、おもちとカタクリ様が似ている気がして。…上手く説明出来ないんですけど』

苦笑混じりにそう言うと、カタクリ様はわけがわからないという顔をする。

『優しい味のせいかな…』
「!…今日はおれが戻るまで休んでおけ。いいな」
『あっ、本当にありがとうございます!ご迷惑をおかけして…!』
「…構わない」

本当に気を付けよう…!

醜い感情→←クローズド・クローゼット



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雪見もち(プロフ) - 最近カタクリ様などハマりした女でしたが露木様の素晴らしい作品により一層好きが溢れて、ずっとニヤニヤしながら拝見させて頂きました!二週も読み直したお話は初めてです…!本当に素敵な作品をありがとうございました!! (2020年7月25日 20時) (レス) id: fce5f8b205 (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - 車輪さん» 車輪さん、ワンピースの世界へお帰りなさいませ!カタクリ様にはまられたとのことでおめでとうございます!(?)こちらこそ、出会ってくださってありがとうございます…!嬉しいお言葉ばかりで、読み返してくださるなんて感激です;;コメントありがとうございました…! (2020年4月25日 0時) (レス) id: 0b597cfcac (このIDを非表示/違反報告)
車輪(プロフ) - 数年追えていなかったワンピースを最近また追い始め、カタクリにドはまりして小説を漁っていたところこの作品に出合いました。続編も含め本当に面白かったです!読み終えてすぐに読み返しに入った夢小説はこれが初めてです。この作品に出合えて本当によかった…! (2020年4月24日 20時) (レス) id: b8a796d02f (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - ヒロさん» ヒロさんコメントありがとうございます!尊いなんて嬉しいです;;ありがとうございます(;ω;`)もっともっとハッピーになるように頑張りますね! (2019年9月22日 9時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
ヒロ - 読んでる間に尊さで何度昇天しかけた事か…………!こんなに尊い小説初めて読みました!最後のハピエンで無事尊死しました( ˘ω˘ ) (2019年8月17日 5時) (レス) id: a8a8fc489f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:露木アマナ | 作成日時:2018年6月8日 0時

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