クローズド・クローゼット ページ22
支えたままの状態から簡単に身体を浮かされたかと思うと、カタクリ様は私をクローゼットに戻してしまう。
「そこにいろ」
『私、大丈夫ですから!少し立ちくらみがしただけで、たいしたことは―』
「黙れ」
ギロリと視線で一蹴。そのまま天井は閉ざされ、私は頭を壁に預けて白を仰いだ。
(失敗した…!)
体調について説教しておいて、自分が立ちくらみだなんて本当に。
(…せっかく、休んで頂けてたんだけどな)
先程までの穏やかな空気を思い出して、改めて自分の失態に泣きたくなる。
【覚えておく】とは言って頂けたけれど、きっともっと私に出来ることはあったはずだ。
『…次なんてないかもしれないのに』
(あの女はおればかりだ)
廊下を歩くカタクリの表情は険しい。
おればかりを見て、おればかりを考え、おればかりに手を伸ばす。
自分のことすら後回しにして。
不快だ。ストレスだ。だが一方で―…
(…一方で、何だというんだ)
言語化できない感情を持て余しながら、カタクリは使われていない客室を探す。
ホールケーキ城内の部屋は数百以上。使われていないだけならば簡単だが、なるべく兄弟達の目が届いていない部屋が望ましい。
(途中で音をあげると思ったが)
何も餓死させようなどと思って食事を与えなかったわけではない。
望めば与えてやるつもりだった。あれだけ自分の意思を主張してくるのだから、それくらいはするだろうと考えていた。
―そしてそれをすれば、おれを侮る馬鹿だと判断出来た。
また、おれに気に入られ見逃して貰おうという魂胆で行動していれば、乞わずとも空腹のアピールくらいはしただろう。
だがあの女はそのどちらでもなかった。
自分の為の発言はどれも一貫してドーナツに関係のあるもの、それ以外はおれの心配などという到底理解出来ないもの。自分の体調不良にすら気付かずに。
風呂を貸して欲しいといったのも、果たして自分の不快だけが理由か疑わしい。
いっそ正面から向き合って真意を暴いてやろうと思っていたというのに、どこまでも思惑通りに動かずに気ばかりが削がれていく。
(わかったのはスイーツ馬鹿ということくらいか)
いくつか開けた部屋で目当ての物を見つけると、カタクリは再び自室へと足を向けた。
(本当に異常だ。あいつも……おれも)
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雪見もち(プロフ) - 最近カタクリ様などハマりした女でしたが露木様の素晴らしい作品により一層好きが溢れて、ずっとニヤニヤしながら拝見させて頂きました!二週も読み直したお話は初めてです…!本当に素敵な作品をありがとうございました!! (2020年7月25日 20時) (レス) id: fce5f8b205 (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - 車輪さん» 車輪さん、ワンピースの世界へお帰りなさいませ!カタクリ様にはまられたとのことでおめでとうございます!(?)こちらこそ、出会ってくださってありがとうございます…!嬉しいお言葉ばかりで、読み返してくださるなんて感激です;;コメントありがとうございました…! (2020年4月25日 0時) (レス) id: 0b597cfcac (このIDを非表示/違反報告)
車輪(プロフ) - 数年追えていなかったワンピースを最近また追い始め、カタクリにドはまりして小説を漁っていたところこの作品に出合いました。続編も含め本当に面白かったです!読み終えてすぐに読み返しに入った夢小説はこれが初めてです。この作品に出合えて本当によかった…! (2020年4月24日 20時) (レス) id: b8a796d02f (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - ヒロさん» ヒロさんコメントありがとうございます!尊いなんて嬉しいです;;ありがとうございます(;ω;`)もっともっとハッピーになるように頑張りますね! (2019年9月22日 9時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
ヒロ - 読んでる間に尊さで何度昇天しかけた事か…………!こんなに尊い小説初めて読みました!最後のハピエンで無事尊死しました( ˘ω˘ ) (2019年8月17日 5時) (レス) id: a8a8fc489f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:露木アマナ | 作成日時:2018年6月8日 0時