片隅に巣食う ページ16
ビッグ・マムとのディナー、もといシャーロット家の会合を終えたカタクリはすぐに自室に戻ったものの、仕事を終えても、夜が更けるまでクローゼットの中を覗くこともしなかった。
部下や兄弟のことを警戒していたのもあるが、知れば知る程不可解な存在に近付くことを、心のどこかで拒絶していたのかもしれない。
しかしもう時刻は深夜。城内も警備以外は寝静まった頃合いで、厨房に連れて行くと約束した手前、見ないふりを続けるのも難しい。
(飯も食っていないんだ。寝ているかもしれない)
それならそれで構わない。今日のところはこの問題に向き合う必要がなくなる。
後で文句を言われようが、たかが一般人。どうなろうと知ったことではない。
そこまで考えて、カタクリは自分自身に舌打ちした。
(ふざけるな、問題は迅速に片づけるのが基本だ。殺さないのは真意を暴く為、こいつのような奴がまた現れた時の対策をとる為だ)
それ以外の理由などありはしない。
苛立ちを抑えながらカタクリはクローゼットを開けた。中にしまわれた一見白い箱のようなモチの中にAが入っている。
「…!」
中身を確認したカタクリは驚愕した。
「っ、おい」
返事は返ってこない。しかし、Aは死んでいるわけでも、眠っているわけでもなかった。
『あれだと甘すぎる?でもあの味がお好きなら…』
真剣な顔をして、ぶつぶつと独り言を呟いている。
「おい!」
『は、はいっ!』
2度目の呼びかけでようやくカタクリに気が付いたAが顔を上げる。
顔色に異常はなく、先程との変化は特別感じない。
(気でも狂ったのかと思ったが、かなり集中していたということか…。一体いつから?おれが離れてから5時間は経ったはずだ)
『す、すみません気が付かなくって!いつお戻りになったんですか?』
慌てて謝罪するAを掴まえて外に出すと、カタクリは質問には答えずにAを用意した袋の中に放り込む。
「約束だ。厨房に連れて行ってやる。殺されたくなければ縮こまって大人しくしていろ」
袋を縛り、担ぐ。体格の大きく違うAは普段扱う武器の何倍も軽く、勢い余ってぶつかった背中からは『いたっ』という声が聴こえた。
袋越しに手を添えられている感覚があるが、体温までは感じない。
『すみません、よろしくお願いします。…あ、そうだカタクリ様。黙る前によろしいですか?』
「…なんだ」
『おかえりなさい。こんなに遅くまでお疲れ様です』
…背中の熱が鬱陶しい。
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雪見もち(プロフ) - 最近カタクリ様などハマりした女でしたが露木様の素晴らしい作品により一層好きが溢れて、ずっとニヤニヤしながら拝見させて頂きました!二週も読み直したお話は初めてです…!本当に素敵な作品をありがとうございました!! (2020年7月25日 20時) (レス) id: fce5f8b205 (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - 車輪さん» 車輪さん、ワンピースの世界へお帰りなさいませ!カタクリ様にはまられたとのことでおめでとうございます!(?)こちらこそ、出会ってくださってありがとうございます…!嬉しいお言葉ばかりで、読み返してくださるなんて感激です;;コメントありがとうございました…! (2020年4月25日 0時) (レス) id: 0b597cfcac (このIDを非表示/違反報告)
車輪(プロフ) - 数年追えていなかったワンピースを最近また追い始め、カタクリにドはまりして小説を漁っていたところこの作品に出合いました。続編も含め本当に面白かったです!読み終えてすぐに読み返しに入った夢小説はこれが初めてです。この作品に出合えて本当によかった…! (2020年4月24日 20時) (レス) id: b8a796d02f (このIDを非表示/違反報告)
露木アマナ(プロフ) - ヒロさん» ヒロさんコメントありがとうございます!尊いなんて嬉しいです;;ありがとうございます(;ω;`)もっともっとハッピーになるように頑張りますね! (2019年9月22日 9時) (レス) id: be3bf55a7b (このIDを非表示/違反報告)
ヒロ - 読んでる間に尊さで何度昇天しかけた事か…………!こんなに尊い小説初めて読みました!最後のハピエンで無事尊死しました( ˘ω˘ ) (2019年8月17日 5時) (レス) id: a8a8fc489f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:露木アマナ | 作成日時:2018年6月8日 0時