最強をダメにする最弱：１

規格外な借り物 ページ11

ドーナツがいかに油と砂糖を含んでいるかを身をもって体感した私。
ご迷惑をおかけしたくて3日間の猶予を頂いたわけではないのに、私はカタクリ様の手を煩わせてばかりだ。

(…な、情けない)

やはりあの時殺しておけば良かったと、呆れられていることだろう。
でもカタクリ様は、3日後まで私を殺しはしないだろうとも思う。

『お優しいんですね、カタクリ様は』
「風呂を貸したのは、汚い姿のせいでクローゼットに虫を持ち込まれるわけにはいかないからだ」
『それは本当に、その通りです…返す言葉もございません』

ここはカタクリ様の自室だったらしく、部屋にはジャグジーが備え付けられていた。
私は川でも水道水でも構わないと言ったのだけれど、他の人に私の存在が見つかるのを避ける為、本当に、本当に畏れ多くもお借りしたというわけだ。

それだけじゃない。
油と砂糖にやられたのは何も肌だけではないというか、肌が被害に遭ったなら当然着ていた服の方が大変なことになっていたわけで。それを洗えば当然、乾くまで着るものがなくなるわけで。

そのまま裸でいろと命令されても仕方ないくらいなのに、何とカタクリ様はご自分のジャケットを貸して下さろうとしたのだ。
あまりに畏れ多いし、そもそも大き過ぎるのでお断りして、結局バスタオルをお借りすることにしたのだけど。
タオルといってもカタクリ様サイズ。普通に全身包まれるので下品ではないと信じたい。

―と、色々あると、まだ出会って数時間の私でも思う。

(優しいというか、面倒見が良いというか…)

懐が!!深い!!

『…』

外に聞こえてはいけないので、叫びたい気持ちを堪えながら私はじっとカタクリ様を見つめた。
存在感があるだけじゃなく、こうしてまじまじ見ると、お顔立ちも厳格な瞳が格好良い。

「…っ、お前はまた…！」
『皆に慕われるのも当然ですよね。格好良くて強いだけじゃなくて、可愛くてお優しいんですものね…慕われないはずがないですよね…』
「やめろ…っ。お前まさか、わざとやっているんじゃないだろうな」
『え？』

努めて冷静に言ったつもりだったのだけど、何か失礼にあたってしまっただろうか。当然のことを言うなってことかな。

「おれが可愛いわけがないだろう。…おい、なんだその腹の立つ顔は。ああ言うな。それ以上口にするな」

【目は口ほどにものを言う】ならぬ、【顔は口ほどにものを言う】。
多分私は、誰が見てもわかるくらい【わからない】という顔をしていたんだと思う。

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