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先生の言葉に、ざわついてた教室がぴたっと静かになって。
みんなの視線が、一斉に先生へと集まる。
翔「みんな、3年間の高校生活お疲れ様。
そしてこの1年間、俺のクラスの生徒でいてくれてありがとう」
穏やかな声と、優しい笑顔。
もうそれだけで、私以外の女子からも、すんって鼻をすする音がし始める。
翔「これから、この学校を旅立って新たな道を行くみんなに。俺から1つだけ、お願いがあります」
一言も聞き漏らさないようにって、一心に見つめる視線に応えるように。
ゆっくりとみんなの顔を見回しながら、先生が話し出す。
翔「これから先。きっとみんなには、今よりもっとつらいことや、悲しいこと。『なんだよ』って思うことがいっぱい出てくると思う。
今までよりも、自分で決めて、その決めたことに責任を持たなきゃいけないことも増えてくる。
そんな時俺はみんなに、自分が思う通りにやってみて欲しいの。
自分には無理かもって怖くても、本当に間違ってないかなって迷っても。
一生懸命考えて、『こうしたい・こうなりたい』って思った自分を、貫いて欲しい。
思う通りにやってみるのと、思い通りに生きるのは、1文字しか違いは無いけど全然違うと俺は思ってて。
思う通りにやったって、思い通りにいかないことも世の中にはたくさんある。
でも、思い通りにいかなくても。少しだけ間違っちゃったとしても。
俺はみんなに、『自分はここまでやったんだ』って、胸を張って次に進める人になってもらいたい。
やれるだけやった自分を、後悔しないで生きていける人になってもらいたい。
もしもそうやっていく中で、どうしてもなにか迷うことがあったら、いつでも俺のところに来て？
卒業しても、みんなが俺の生徒であることは、永遠に変わらないから」
黒板の前で微笑むその姿を。
伝えてくれる言葉の、1つ1つを。
ほんの少しも零さないようにって、全員が耳を澄まして先生を見つめてる。
翔「みんなに会えてよかった。卒業おめでとう」
その優しい声を聞いて、みんなの嗚咽と鼻をすする音が教室を埋め尽くして。
「俺からは以上です」って笑う先生の姿が、溢れ出す涙で滲む。
…先生。
今ここにいる生徒も、みんな思っています。
櫻井先生に会えてよかったって。
櫻井先生の、生徒になれてよかったって。
心から、そう思っています。
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作者名：あげは
| 作成日時：2016年7月6日 1時
