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プチパニック中の私のことなんてそっちのけで、ずかずかキッチンに入って行った先生は、冷蔵庫から取り出したビールを立ったまま飲んでる。
小瓶を煽りながらごくっと喉を鳴らして、「あー」って唸る姿が絵になり過ぎてて。
シャツのボタン全開で、鎖骨辺りをだるそうに擦ってる仕草が色っぽくて。
借りてきた猫状態の私の身体が、どくんっと脈打つ。
翔「なにやってんだよ」
「えっ!?」
ダイニングテーブルの脇で動けずにいる私を呆れた目で見ながら、ビール片手に先生が歩いて来る。
翔「座んねーの？」
「ぇ、あ…」
翔「……」
挙動不審気味な私の前まで来た先生が、ダイニングテーブルにビールの小瓶を置いて。
そのことんって音にびくっと震えた私の身体を、突然ぐいっと引き寄せた。
翔「着物が邪魔で座りづれぇなら、脱がせてやろうか？」
抱き寄せられた耳元で囁く、低い声。
シャツの下のたらっとしたランニングから覗く、男っぽい鎖骨と胸元。
「…っ」
翔「邪魔くせぇんだろ？」
首を傾げて耳元で囁きながら、先生の指が器用に帯留めを外す。
「ちょっ、先生っ」
翔「なに」
「ちょっと待っ…んっ」
先生の唇が首筋に触れたら、びくんっと肩が震えて。
さらに帯を解こうとする先生の腕を遮るように掴んだ。
翔「…なんだよ」
「なんだよじゃなくてっ」
翔「着物なんて脱がせる為に着んだろ？」
「なっ、ちが」
翔「うるせーな大人しくしろよ」
身を捩る私をダイニングテーブルの縁に押し付けて、めんどくさそうに呟く。
背中に回った先生の手が帯の結び目に触れて。
どくんっと波打つのを制するみたいに、先生の身体が私を押さえつける。
慣れた手つきで呆気なく解かれた帯が、しゅるっと頼りない音を立てて床に滑り落ちたら。
締め付けから解放された身体とは裏腹に、破裂寸前の心臓がぎゅぅぅぅっと締め付けられる。
「やっ…」
翔「やじゃねぇ」
「っ、せんせ、待っ」
翔「うるせーって言ってんだろ黙れ」
低い声のあと、すぐに唇を塞がれて。
先生の濡れた舌先が、私の中に滑り込む。
「んんっ」
くちゅって舌が絡まる音と、帯紐が身体から離れる音が鼓膜を揺らして。
重なった唇が、角度を変えてまた擦れ合ったら。
先生の大きな手で掴まれて、ずるっと肩から離れた振袖が。
真っ黒なテーブルの上に、赤い撫子の花を散らす。
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作者名：あげは
| 作成日時：2016年7月6日 1時
