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「…っ、はぃ」


翔「ん。じゃあ挨拶行くよ」


柔らかい声に、張りつめてた気持ちがふっとほどけて。


止まらないドキドキは、先生の完璧なエスコートに吸い込まれていく。








翔「岩崎先生」


先生の呼びかけに、50代後半ぐらいの男性が振り向いて。


「あぁ、翔君」って、威厳たっぷりに微笑んだ。





翔「ご無沙汰しています。昨年末のパーティではご挨拶も出来ずに申し訳ありませんでした」


岩崎「いやいや、元気そうでなによりだよ」


翔「ありがとうございます」


岩崎「…うん」


少し間を空けた返事のあとで、ちらっと私に向けられる視線。


政治家特有の、感情の読めない笑顔。





その一瞬の鋭い目に晒されて、どくんっと心臓が跳ねた。





きっと、この人は知ってる。


今まで先生の隣にいたのが、私じゃないこと。





やっぱり私は…








翔「先生。こちら僕の婚約者で、中山Aさんです」








息が止まりそうな沈黙を破る、穏やかな声。


私の背中に添えられた指先に、ふっと力が籠る。





「…っ」


岩崎「あぁ…」


少し驚いたような目をした岩崎先生が、すぐに訳知り顔でふっと目を細めた。





「はじめまして。中山Aと申します」


岩崎「はじめまして、岩崎です。…いやぁ、美しいお嬢さんだね」


「っ、いえ」


岩崎「お若いのに、着物がとてもよく似合ってる」


私の撫子柄の赤い振袖を見て、愛想良く微笑む。





翔「Aの家は華道家で、A自身も花をやっているので和装には慣れているんですよ」


岩崎「あぁ、通りで」


翔「今日壇上に飾られている花は、Aが活けたものです」


岩崎「ほぉ…あれを。そりゃあすごい」


「ありがとうございます」





その大人の微笑みの裏にあるんだろう感情は、子供の私には、全部は読み解けなくて。


ただ、あの空気の中で、はっきりと "婚約者" って紹介してくれた先生に胸がいっぱいで。


にこやかに談笑を始めた2人の隣で、立ってるのが精一杯だった。





翔「では先生、どうぞごゆっくり」


岩崎「あぁ、ありがとう」


翔「まだまだ若輩者の2人ですが、今後ともよろしくお願いします」


岩崎「こちらこそ、末永くよろしく頼むよ。…Aさんもね」


「っ、はい」


岩崎「結婚式には呼んでくれよ?」


翔「もちろんです。と言ってもまだだいぶ先ですが」





少しいたずら顔で笑う先生に、「お幸せに」って、岩崎先生が微笑んだ。
 

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作者名:あげは | 作成日時:2016年7月6日 1時

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