▼383 Side.Miyuki ページ15
振り向いた俺を座ったまま見上げて、ふわっと微笑む。
翔「……なに」
智「いっつも1人で立って、なんでも自分でやんの、疲れるでしょ」
翔「……」
智「別に全部自分でやらなくたっていいんだよ。さっき俺に寄りかかって来たみたいに、誰かと一緒にやりゃいーじゃん。そっちのが、楽だし楽しいよ」
…なんなんだよ、いきなり。
俺この人に、なんも言ってねーけど？
まだ会うのも3回目だし…会ってもくだらねーことしか話してないけど？
翔「…いきなり、離れんじゃん」
智「んー？」
翔「誰かに寄っかかってたって。自分の都合で、いきなり突き放すじゃん」
智「……」
翔「人間なんて…、そんなもんだろ」
15の俺に、「お前には婚約者がいる」とか涼しい顔で言い放った親父だって。
最近、ずっと一緒にやって来た右腕社員に裏切られて大事な商談ぱぁになって。
そのせいで、長年の取引先にも呆気なく契約切られて。
それでもあの人は、顔色1つ変えず、愚痴1つ零さず。
全部自分でなんとかしてたよ。
人間なんてすぐ裏切るもんで。
それが嫌ならなんでも1人でやるしかねぇって。
てめぇのケツはてめぇでしか拭けねぇって。
俺は、親父から教わったよ。
智「…そんなことないよ」
翔「あ？」
智「一緒に寄っかかり合える人が、ちゃんとどっかにいるよ」
翔「…信じらんないね」
智「だって笑うじゃん？」
翔「は？」
智「みんなの前で見せる作った笑顔じゃなくて。さっき俺と怒られた時みたいに、普通の高校生の顔で笑えるじゃん？」
翔「……」
智「そうやって笑ってる方が、毎日楽しいよ」
翔「…わかったようなこと言うなよ」
智「んー？」
翔「口だけならなんとでも言えんだろ」
智「……」
翔「なんも知らねーくせに。あんたの生徒でもねぇ俺に説教垂れんのやめてよ」
いつもふにゃふにゃ笑ってるだけのお絵かき教師には。
俺の気持ちなんて、どうせわかんねーよ。
智「じゃあ、俺のとこにおいで」
翔「…は？」
智「1人で立ってんのがしんどくなったら…俺のとこにおいで」
翔「…っ」
智「見せてあげる。全力で寄っかかっても、支えてくれるやつもいるって。一緒に、倒れようとしてくれるやつもいるって」
絶句してる俺を見上げて、ふにゃっと笑って。
智「俺先生だから。そのくらい、教えてあげるよ」
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作者名：あげは
| 作成日時：2016年7月6日 1時
