５７：彼の一言が私の心を ページ7
.
「 …良いの、大丈夫 」
大丈夫 なんて、そんなこと、ないのに。…だけど今の私には、強がることしか出来なかった。下手をすれば、また涙が溢れてしまいそうで。やっと纏まってきた感情が、再びめちゃくちゃになってしまいそうで。
M『 …想うだけで良いなんて、そんなの無茶に決まってるだろ 』
不意にミンギュくんの低い声が耳に届き、ソラを見つめていた目を、彼の方に向ける。
…ミンギュくんは、ずっと好きだったソラと結ばれて、幸せなはずなのに。……どうして私の気持ちに、こんなにも悲しそうで、悔しそうな表情を浮かべてくれるんだろう。
M『 …ウォヌヒョン、失恋した後に教えてくれたんだ。自分は勇気がなくて、なかなかヌナに気持ちを伝えられなかった、だけど、人間は貪欲で我が儘な生き物なんだって。……意味、わかる？』
難し過ぎるその問いに、私は答えられなかった。わからない と降参することも、出来なかった。
M『 …想うだけで良いなんて、それはただのキレイゴトだよ。Aはヒョンが好きだから、ヒョンのことを思ってそうするつもりなんだろうけど……じゃあ、Aの気持ちはどうなるの？ヒョンにばっかり気ぃ遣って、A自身の気持ちは無視するつもり？やっと好きだって気付いたのに？』
早口で捲し立てるミンギュくんに、何も言い返せなかった。怒ったような表情と口調に、私は気圧されてしまっていた。
キレイゴト。……確かに、ミンギュくんの言う通りだ。再び手に力が入って、膝の上で拳が作られる。
M『 人間は貪欲で我が儘な生き物だよ 』
ミンギュくんは再び、ウォヌ先輩に言われたという言葉を繰り返した。…それは私に伝えてくれるというよりは、言い聞かせているかのようだった。
先輩の一言が、重い石のように、私の心の上にズドンと落ちてくる。せっかく固めた覚悟が、その石のせいで粉々に崩れ落ちてしまうのではないかという危惧が私の中に生まれた。……それだけ、私の キレイゴト はとても脆くて、弱々しいものだったのである。
M『 …いつか必ず、想うだけじゃダメになって、ヒョンのことを手に入れたくなる。ヒョンの隣にいたいって、Aは願ってしまうよ 』
ミンギュくんの話し振りには、確信めいたものが含まれていた。それによって私の心がドキンと音を鳴らしたのは、きっと、私も自覚があるからだろう。
想うだけで良い。……こんな儚い気持ちには、いつか…絶対に限界が訪れる。
その時私は、どうするんだろう。先輩に、何が出来るんだろう。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 417人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アオコ(プロフ) - ハローさん» お返事遅くなってしまいほんとうに申し訳ないです…！コメントありがとうございます！これからもよろしくお願い致します…！！！！ (2020年11月21日 1時) (
レス) id: ad766077a4 (このIDを非表示/違反報告)
ハロー - 続き楽しみにしてます (2020年11月14日 22時) (レス) id: 5db7b589d2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アオコ | 作成日時：2020年10月18日 18時
