男装生活とその日常について３ (ページ45)

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「なんか違うなって思ったときには遅くて、最初は良い寄ってくるだけだったのが、ちょっとエスカレートしたらしく……」

「……なあ、大丈夫なのか？」

「大丈夫、何もされてないよ。すぐに逃げたし」

「そういう問題じゃないんだけどな」

「……ごめんなさい」

「いや、オレも悪い。もう謝るな、お前が悪い訳じゃないだろ。……それで？」

「腕掴まれたから蹴って、それがなかなか強かったみたいで……外に出て人を呼んだら、いろいろあってさっきの会議室に」

誰かに助けを求めることが出来たのは不幸中の幸いだ。

追って話を聞けば、通りがかった人が偶然局の偉い人で迅速に事が動いたようだ。

犯人はどうやらこの局の従業員らしい。

だからあんな強気にAが交渉していたのか。

もしかしてこいつちょっと馬鹿じゃないのか？

「メンバーには内緒にしてほしい。マネヒョンにもそう言うつもりだし、さっきメッセージ送っといたから」

「なんで？」

「だってジュニは優しいから自分のせいにしちゃうでしょ？それはさすがに可哀想だよ」

「またそんな……」

「変質者は案外近くにいるって解ったし、これからは知らない人に一人でついて行かないから
。ね、お願い」

「……お前は三歳児か？」

「本当はスンチョルにも来てほしくなかったんだよ？」

「なんで……！」

「だってスンチョル、責任感じて気に病むと思ったから。どうせ「探しに行けばよかった」とか思ってるんじゃない？」

Aが「違う？」と、人を寄せ付けないような寂しい表情をする。

「思ってるよ、とてつもなく悔やんでる」

「でしょ？」

「聞いた瞬間意味が解らなすぎて心臓止まった」

「ごめんね」

「なんでさっきからお前が謝るんだよ、謝るのはオレだろ」

「違うよ。ジュニに先に戻ってって言ったのも、知らない人を信用したのもオレ。だから悪いのは、」

「違う違う、わかったから。悪いのはお前を襲った中年のおっさんだろ、な？」

「……そっか、そうだね」

ぎゅっと手を握り込むから、その冷たい指先を持ち上げる。

痣はさっきよりも少しだけ色が濃くなっているように感じた。

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