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「え、どしたの」
『ちょっと、夜な夜な泣けるドラマ見ちゃって』
朝起きたら、
コンタクトが入らないくらい目が腫れてた。
失恋の痛手、
初めて眼鏡で潤さんに会った。
ギャップもくそもない。
だって目が腫れてるし...。
「今日は、厨房にいる？」
『いいえ、仕事はちゃんとします！』
「ふ、さすが」
頑張れよ、って背中をたたかれて、
あぁ、苦しい。
恋愛って、こんなに苦しいものだったっけ、
こんなの苦しくて、苦くて、
つらいものなんだっけ。
『いらっしゃいませ』
こんな日でも、潤さんの人気はいつも通りで、
マダムたちを打ち落とし、
多分新しく来た新規の学生さんも打ち落とされた。
「あ、今日店閉まった後にそのケーキ取りに来るから」
『桃ですか？』
「そう」
閉店間際、
いつもロスはほとんどないけど、
今日は珍しくお客様が取りに来ていないケーキがあったから、
思いっきり凝視していたらしく、
そう、潤さんに声をかけられた。
『分かりました』
多分、潤さんのメゾンの誰かだろうなって予想を立てて、
閉店時間を過ぎて、
モップをかけている頃に、
扉が開いた。
『いらっしゃいま、せ』
「すみません、遅くなってしまって...」
急いで走ってきたんだろうか、
肩で息をしている彼女。
「いらっしゃい、走ったの？」
「っはい、」
「そっか、なんか飲む？」
「大丈夫です...」
昨日の、女の人だった。
昨日は、長い髪を下ろしていたけれど、
今日はアップにしていて。
お洋服も、
昨日は水彩みたいな可愛いお花柄のトップスに、
麻っぽいデニムのパンツだったのに、
今日は、黒いレースのタンクトップに、
朱色のフロントボタンのロングスカートで、
少し大人っぽい感じ。
「桃のケーキね」
「はい、っわぁ、すごい...きれい...」
「丹精込めて作ったので(笑)」
なんだか、ドラマのワンシーンを見てるみたいだなって思った。美しい、シェフの格好をした松本さんと、
少し大人っぽい、可愛らしい彼女。
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作者名：あきんこ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=akinko0125
作成日時：2019年7月20日 15時
