《完結》 Maison de tempete 【ars】 (ページ4)

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『疲れたー』

戸締りをして、坂を下りながら空を見上げる。

きれいな空、には星が瞬いていて。

蝉の鳴き声とか、夏特有の音が、

坂を下りるにつれてだんだん小さくなる。

ちょっと不気味なオルゴールの音が、

ショッピングストリートに響き渡って、

いつもちょっと、アンバランスだなぁ、って思うの。

スマホを見ると、遅延で振り替え輸送の案内が来ていたから、

定期代が高いけど、乗り換えずに1本で帰れる路線の駅に向かうことにする。

いつもと違うことが重なると、

なんだか嫌な予感がする。

電車に乗るために、ホームへ行ったら、

その予感は当たった。

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潤さんが、電車を降りたのが見えた。

可愛い女の人と一緒に。

清楚な雰囲気の、とっても上品な、だけど幼さも抜けきっていない、

愛嬌のある女の人。

潤さんが、その人に笑いかけて、

二人とも笑っていて、とっても幸せそうで、

「いいの？んなこと言って」

　「いいんです」

潤さんが、本当に親しい人にしかしないような笑い方で、

彼女に笑いかける。

エスカレーターを上がっていく二人から、目が離せなくて。

ぽろぽろと、涙が落ちてるってことに気づいたのは、

人がまばらな車両に乗って、座った時だった。

あぁ、私、潤さんのことが好きなんだ...。

やっと、そう気づいたのに、

もう、早速失恋して。

いつから？って言われたら、

きっと、初めて会った時だ。

あの坂で、レモンを拾ってもらった時。

もう、すでに好きになってたんだ...。