《完結》 Maison de tempete 【ars】 (ページ17)

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『って、』

「ん？」

『なんで二宮が買い物についてきてんの？』

「え？」

ダメなの？って何を分かり切ったことを！

「ほら、Aこういうのも似合うんじゃない？」

『はぁ？』

　「彼氏さん、お目が高い！」

きっと似合いますぅ、なんて店員さんに言われて、

ちょっといい気になって試着してみたら、

ほんとに気に入っちゃって。

買おうと思ったら、二宮が買ってくれるという意味の分からないサイクルにはまること数回。

初めのうちは、一晩のホテル代ー、とか

今朝のルームサービス代ーとか思ってたんだけど、

「ここは？」

『っや、そこはいい！』

「なんで？これとか似合いそうだけど」

『いいったらいいの、』

桁がさ、だんだんおかしくなっていって、

今なんて、それ腕時計なんですけど。

数百万はくだらないそれを平気で買ってくれようとする二宮の本心が見えなくて、←買わないかもよ

こわい。

「A？」

二宮、デートの時はいつだって割り勘だったじゃない。

誕生日プレゼントも、高価なものなんてもらったことはなくて、
肩たたき券とか、ジュースのおまけとかで。

私の知ってる二宮じゃなくて、怖い。

「あ、休憩する？」

『、』

「A？」

二宮と目が合って、引きつけられたみたいに離せなくなる。

切ない、この気持ちの正体はいったい何？

『帰って、』

「は？Aすっごい顔色悪いけど」

『いいから、帰って』

二宮と、目を合わせちゃいけない。

私が、私じゃなくなる気がした。