世界は私を侮辱する【ヒロアカ】

ある日の新聞 ページ14

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___あの、日本中を驚かせた雄英体育祭の選手代表挨拶から約十年が経つ。


1年A組を目当てに集まったマスメディアの度肝を抜いた、彼女。

かくいう私も、「開催に物議をかもす＝数字が取れる。今年の目玉はやっぱり1年A組！」…と、あの選手代表挨拶を聞くまでは思っていた。


子供達に「将来なりたい職業は何か」というアンケートを取ると、今も変わらず一位は【ヒーロー】である。

だが、理由を尋ねると、十年前からの変化が伺える。

十年前は「かっこいいから」が殆どであったのに対し、今は「誰かの為になりたいから」が半数近くに及んでいる。

これは、紛れもなくあの雄英体育祭が影響だろう。
彼女は宣言通り優勝し、優勝後も演説のような挨拶をした。

「私はヒーローが嫌いだ」
「ヒーローはかっこいいものではない」
「一番かっこいいのは、誰かの為に動ける人間だ」

___等々。


十年前、日本中を騒がせた瀬川Aさんは今、本当に世界を変えようとしている。

昨年瀬川さんが開発したある物が、世界の優れた開発品に選ばれた。
薄い手袋のような開発品で、手に着けると水や風等が出せるという、魔法のような物。

何故これを開発したのか、瀬川さんに尋ねてみた。


『これは無個性の方向けに作ったものです。
魔法のような物、と仰いましたが、無個性の方からしたら、私達が使う“個性”はまさに魔法なんです。
彼等が使いたくても使えない“個性”。それをこれで可能にしました』


「今後も、無個性の方向けの開発を？」


『はい、そのつもりです。まぁ個性持ちの方も使えますけどね…無個性の方の気持ちに寄り添って、作っていきたいと考えています。
だって、ヒーローや個性持ちの方には、サポートアイテムがあるじゃないですか。
無個性の方の為のアイテムだって、あってもいいでしょう？』


「確かにそうですね…
あの雄英体育祭の優勝後、“ヒーローが嫌い”と発言していましたが…今でも嫌いですか？」


『あら…先日、ヒーローと結婚した私に疑問を抱いての質問ですか？』


「やはりバレましたか…
彼と結婚した、ということは、ヒーローを好きになったということですか？」


近い将来、必ず世界を変えると思われる瀬川さんは、茶目っ気たっぷりに微笑みながら答えた。


『いいえ、好きではないです。
だって…なりたい職業アンケートで、私の職業よりも一つ順位が上なんですもの』



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