十話 ページ10
・
渋るAちゃんを無理矢理ベッドで寝かせて、俺はソファで寝た。
もう時間も時間だったしね。
手を出さなかった俺は偉い。まぁ、元々そういうつもりで声を掛けた訳でもないし、俺も精神的に疲れてたからぐっすり寝てたけど…
「…ふぁ、」
もう朝か…と伸びをしながら欠伸をする。
意識がはっきりしてくると、台所の方から物音が聞こえてきた。
…まさか
『あ、おはようございます』
「うん、おはよう…え、すご!」
机の上に並べられた、沢山の種類の料理。
え、食材全然なかったのに…しかも、これだけの量、どのくらいの時間を掛けたんだろう…
『朝、コンビニに食材を買いに行って…真冬さんが何が好きなのか分からなかったので、とりあえず少なめに沢山の種類を作ってみました』
「料理上手なんだね…」
ありがとうございます、と恥ずかしそうに笑った。
これなら、昨日の案が使えそうだ。
それにしても…世間知らずだから、てっきり包丁も握ったことがないと思い込んでいた。
「いただきます」
『どうぞ…』
一口食べただけで分かった。Aちゃんには食べ物屋のバイトが似合う。
「すっごく美味しい!」
『良かったぁ…あ、何が好きで何が嫌いか教えて貰えますか?』
「うん。でもその前に、全種類食べていい?」
『どうぞ!』
味付けが俺好みだった。たまたまだろうけど。
俺の目の前で食べ始めるAちゃんを見て、新婚か同棲を始めたばかりの恋人かと思った。
…いや、周りからはそう見えるんだろうけどね。
「…あ、でも、朝早い時間も危険だから気を付けてね」
『危険?』
「うーん…酔っ払いに絡まれて、また手に痕付けられちゃうかもしれない」
『あ…気を付けます』
襲われる、と言っても分からなかったようだったので、言い方を変えてみた。
昨日の痕は薄くなっていて、消えるのも時間の問題だろう。
「ご馳走様でした。すっごく美味しかった…ありがとう」
『お口に合って、良かったです』
そう言って、嬉しそうに微笑んだ。
こんなに美味しいご飯を毎日食べれるなんて…最高じゃない?
「あ、そうだ。今日この後、買い物に行こうと思ってたんだけど…いい?」
『大丈夫です』
「じゃあ…準備したら行こっか」
『はい!』
・
841人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鈴里風夢 | 作成日時:2019年2月2日 17時