三十三話 ページ33
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「どこで何をしていても…皆口を揃えて、まふまふ、まふまふって!!
新しいことに挑戦したくて、まふまふっていうフィルターを外して俺を見て欲しくて、別の名義で活動を始めても、まふまふだってすぐにバレて広められて!!
俺はまふまふでいる限り、一生まふまふから逃れられない!
俺はまふまふじゃない!相川真冬なのに!!
……もう、嫌だ。もう嫌なんです。
俺はただ、音楽が好きなだけ。
曲を気ままに作って、歌って…楽しみたかっただけなのに。
なんで、相川真冬の存在を消してまで、まふまふでいなきゃいけないんですか?
女の人とコラボしただけで動画が荒れたり、俺の何気ない一言で炎上したり、盗撮されたり、居場所を特定されたり…
まふまふじゃなかったら、俺はただの相川真冬なのに……!」
はぁっ、と息を切らせながら二人を見ると、呆然としていた。
…結局、相談したところで何も変わらない。
「…二人は、何か出来ますか…俺のために。
相談されても、ただ困るだけでしょ?
相談なんて、ただの気休めにしかならない。
だったら、わざわざしなくてもいい。
…もう、いいんです。
俺にはもう、まふまふは必要ない」
睨みつけながら言う。
…お願いだから、もう俺に構わないで。
俺の目を見つめていたそらるさんが、ポケットからスマホを取り出す。
何度かタップした後、俺にある画面を見せた。
「…未練、あるくせに」
「!…なん、で」
Realityの二曲目、【13本の赤い薔薇】が流れ始める。
まだ、投稿してから二週間しか経っていないのに、既に三十万回も再生されている。
…まさか
「一番上のコメント、見て。
「まふまふさんと同じギター、似ている曲調や歌詞、初投稿のタイミング…
もしかして、Liarさんがまふまふさん?」
…このコメントのせいで、コメント欄が荒れてる」
「yuna…由菜?」
『…アイコンのプリクラ、由菜ちゃんです』
思わず舌打ちをする。
俺が曲を本当に書くか分からないから、先に手を打った、ってことか。
「由菜って?」
『私の元バンドメンバーで、真冬さんに直接曲を書けと脅しのようなものをした人です…』
「…じゃあ、今回だけじゃ済まないってこと?」
天月くんの言葉を聞いて、目眩がした。
俺は、ここでもまた居場所を失くすの…?
しかも、Aちゃんを巻き込んで…
彼女にまで、辛い思いをさせてしまうの?
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作者名:鈴里風夢 | 作成日時:2019年2月2日 17時