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二十六話 ページ26





Aちゃんと、少し気まずいまま迎えた朝。

美味しい朝ご飯も、沈黙のせいでいつもより楽しめなかった。



「…ごちそうさま」



立ち上がって食器を片付けようとすると、不意に手を掴まれる。



『あのっ…私と、お話しませんか』


「…昨日の、名義の話?
それなら話したくない…んだけど」


『…私達は、お互いに自分のことを隠していると思うんです。
私は、真冬さんともっと親しくなりたい』

『だから…』



そう言って、下唇を噛む。
躊躇いながらも、震える声で言った。



『私の話を、聞いて貰えますか』



Aちゃんの、隠していたこと…

きっと、家のことだろう。一ヶ月経っても連絡がないなんて、普通なら有り得ない。


こくりと頷き椅子に座ると、ほっと安心したように息を吐いて、俺の目を見つめた。



『今まで、隠していてごめんなさい。
私、小鳥遊Aは…

ヴァイオリニスト、小鳥遊春恵の娘です』


「…そ、っか」



何となく気が付いていた。


綺麗なお辞儀、丁寧な口調、世間知らず、お嬢様のような格好…

それと、首にあった痣。


あの痣は、きっとヴァイオリニストによくできる痣なのだろう。

ヴァイオリンの経験があると気付かれると思って、慌てて隠したのかな…



『…出来損ない、なんです』


「え?」



微かに震えながら、そう言った。

机で見えないけど、きっとスカートの裾を握り締めているんだろう。



『妹は、ヴァイオリンの才能があるけど…私にはなかったんです。
だから、家では使用人のような立場でした』


「…それで、家事が得意なんだ」



世間知らずのお嬢様なのに、何故こんなに料理を含めた家事が上手いのか不思議だった。



「追い出された原因は、バンド?」


『はい。デビューの話を頂いた時に貰った名刺を机の上に置いていたら、母親に見られてしまって…
…結果的に、バンドを抜けさせられたのも、私が悪いんです』



そう言って、机の上に置いていた手帳の、今から二ヶ月前の予定を見せた。

…休憩時間あるの?って言いたくなる程、予定で埋まっている。

しかも、門限が六時…



『門限六時は…建前のようなもので。
家事をこなしておけば、家を出ても怒られませんでした。
…というより、気付きませんでしたね』


「そうなんだ…」



バンドの練習には中々参加出来ず、デビューしても邪魔になると考えられたのだろう。

でも…勉強も家事も頑張っているんだから、仕方がないじゃん。



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作者名:鈴里風夢 | 作成日時:2019年2月2日 17時

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