一話 ページ1
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@まふまふ
僕はまふまふだけど、
まふまふじゃないんです。
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震える指で、送信ボタンを押す。
そして、皆の反応を見る前にログアウトをした。
「…っ、はぁ」
罪悪感の前に、肩の荷が降りるような、安堵を感じてしまった。
…そのくらい、僕は疲れていたのかな。
「…あぁ、もう“僕”じゃなくていいんだっけ」
何でも屋のまふまふ。
それが“俺”、相川真冬の二つ名だった。
二つ名、というより、そっちがメインになってたけど…
「やっと、“まふまふ”から逃れられる」
ソファに寝転がって、目を瞑る。
“まふまふ”はもういない。
歌い手の世界から、消えた。
俺はもう、自由なんだ。
「…やると決めたからには、やり通さなきゃね」
起き上がって、元々用意していた荷物を手に取った。
窓、カーテンを閉め、電気等の戸締りの確認をする。
…食材をまとめ買いするタイプじゃなくて良かったかもしれない。
すっからかんの冷蔵庫を見て、一人笑った。
全部の確認を終え、部屋を出て鍵を閉める。
…この部屋に帰ってくることは、当分ないだろう。
思い出が詰まったこの部屋から離れるのを名残惜しく思う。
でも、これは俺が、俺として生きていくために必要なことだから。
「っよし、行くか!」
大きめの独り言を呟き、部屋に背を向けて歩き出した。
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作者名:鈴里風夢 | 作成日時:2019年2月2日 17時