三十四話 ページ34
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「コメント欄の荒れを一瞬で止める方法がある。
気づいてるだろ？」
「…まふまふが復活して、別人だと明言すれば止まるかもしれません。
でも…嫌です。
俺はもう、まふまふでいるのは……」
「嘘、でしょ」
「…え」
俺の目を見て、はっきりとそらるさんは言った。
嘘？まふまふでいたくない、っていう俺の気持ちが、嘘？
そらるさんが、曲の歌詞の一部分を指差した。
『“未だベールに覆われた私”
“君に上げてもらいたい”…？』
「これが、まふまふの本当の気持ちじゃないのか？
自分が持つ秘密を…苦悩を、誰かに暴いて欲しかった。
お前はあの呟きで、まふまふを辞めたいって読み取れるように呟いていた。
だけど…本心じゃない、嘘だろ？
確かに、リスナーのことや名義のことで悩んではいた。それは俺らも薄々感じてたよ。
だけど…辞めたいって本気で思ったことはないだろ。
いつもまふまふは、誰よりも楽しそうに、幸せそうに…曲を作って、歌ってた。
リスナーだって、人一倍大事にしていた。
あの呟きも、本当は…苦渋の選択だったんじゃないか？
自分が何か行動しないと、リスナーも変わってくれない…そう考えて、あの呟きをした。違うか？」
思わず無言になる。
…図星だ。
辞めたいだなんて、思っていない。
歌い手の皆と、ライブ、コラボ、ネタ動画…他にも沢山のことがしたい。
リスナーの皆に、歌声を届けたい。
まだ、俺は“まふまふ”として、やりきれてない。
…だけど。
「…どうすれば、良かったんですか？
俺はあの方法しか思い付かなかった。
このまま、リスナーの一挙一動に惑わされていたら、何も変われない。
今はまだ、俺だけの問題だけど、何もしなければ他の人にも被害が及ぶ。
…それが、どうしても嫌だった。
こんな悩みを抱えるのは、俺だけで十分だと思ったんです…」
「まふまふ…」
「でも、結局Aちゃんに迷惑をかけた。
何も知らない、関係のないAちゃんに。
…ごめんね」
そう言うと、Aちゃんはぎゅっとスカートの裾を掴んだ。
そして、小さな声で、でもはっきりと呟いた。
『…馬鹿なんですか？』
「え？」
『いや、真冬さんは馬鹿です！』
「…へ」
いつも綺麗な言葉しか言わないAちゃんの口から、馬鹿、と言われるとは思っておらず、間抜けな声を出してしまった。
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作者名：鈴里風夢
| 作成日時：2019年2月2日 17時
