私も生きてたのに

参拾玖 ページ39

はっ、はっ、と犬の様に息を荒くさせて人間はその場に倒れ込んだ。気持ち悪かったからその場で殺してAちゃんの目を塞いだ。



「こういう血気術か〜、面白いね」



盛らせる血気術。見てたら結構強力で足の力を抜けさせるくらい。
一度俺に向けてしてみたけど、俺には効かないみたいだから、鬼には効かないらしい。
その後も血で力を引き出してやり、幾つか血気術が使える様になった。



「途中経過等どうでも良い。手始めに柱一体でも倒して来い」



報告に行ったがぴしゃりと厳しく返された。
柱、と言われてAちゃんは身震いをする。確かに、柱の人達は知り合いだから嫌に決まってるだろうけど。
自分が死にたくないのなら行っておいで、と俺は背中を押した。

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突如居なくなったAを探して早、一週。
冨岡さん達も毎日探してくれてはいるが手掛かりも何も見つからない。
俺は柱稽古に参加する様に言われ、夜は寝る時間を支障が出ない程度に惜しまずにAを探し続けた。



「A…っ！」



俺のせいだ。
俺があの時に逃げたから、それを追ったAを一人にしたのが悪かったんだ。
ちゃんと面と向かって謝って話をしていたら、こんな事態にならなかったのかもしれない。

柱の皆さんでも見つけられないのに、俺が見つけられる訳が無い。
時間は悲しくも有限で、流石に寝ないと不味い頃合いになってきた。



「…寝よう。ちゃんとしないと、Aも…悲しむ、よな」



今日もまた、昨日、一昨日と同じ様に肩を落として稽古を付けてもらっている宇髄さんの所へ戻ろうとした。
未然。覚えのある匂い、探していた匂いがして無我夢中にその匂いを辿った。




「Aっ！！」



匂いの持ち主の名を呼ぶ。
発生源に辿り着けばAが立っていたのだ。



「A…だよな？幻を見ている、んじゃないよな？」



一歩近づくと、顔を上げたAの表情が月光の元に晒された。




「っぁああ！！」


「A！？」



裏返った声を上げ、生み出した鋭利な結晶を大量に俺に向けて放った。
直ぐに刀を抜き、その結晶を受けたり切ったりした。
攻撃を始めるAは可笑しくて、前まで生えていなかった牙がちらりと見えた。


「A、俺だ！炭治郎だ！」



地面からも水晶が生えてくる。
着地を間違えれば、足を貫いて使い物にならなくなるだろう。
暴走を始めるAにどうすれば良いのか分からなかった。

首を切るか、否か。

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