すいかとみかんとママレード(黒×橙) (ページ23)

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今年も、母さんにすいかを買ってくるよう頼まれた。

俺とAの家では毎年夏休みにちょっとした恒例行事みたいなものがある。

それは、俺とA、辰哉くん、ラウールですいかを食べて、その後近くの公園で花火をすること。

すいかの準備は俺、花火の準備はAの家と決まっていて。

その日のお昼頃、買い物に行こうとドアを開けると、隣のドアも開いた。

「蓮」
「A」
「すいか？」
「そっちは花火？」
「うん。あとジャムなくなったから好きなやつ買ってきなって言われた」
「どうせママレードだろ」
「正解」

屈託のない笑顔。

見てると何だか苦しいのに、可愛いなと思う自分もいる。

複雑な気持ちを抱えながら、好きになってしまった人と肩を並べて歩きだした。

「うまっ！」
「やっぱ最高ー！」
「甘いね、めっちゃ美味しい」

同じ顔して同じリアクションですいかを頬張る3きょうだい。
俺は自然に笑みがこぼれた。

そして食べ終わってからは、

「うわー綺麗！」

近くの公園に移動して4人で花火をした。

見た目だけじゃなくて音も綺麗で、でも様々に色を変え魅了する。

ついてる時間も短くて、そこに感じる儚さ。

Aたちとの小さい頃からの恒例行事。
数年前にはラウールも加わった4人で過ごすこの時間は、俺にとっての宝物みたいなもので。

Aへの恋心が、俺の思い過ごしだったらいいのに。

もし、Aへの想いを知られてしまったら。

Aと康二だけじゃなく、辰哉くんとラウールとも、今みたいにこうやって過ごせなくなるんだろうな。

それはやっぱり嫌だった。

みんなの為にも、自分の為にも、俺の気持ちはこの花火みたいにすぐに消さなきゃいけないんだ。

楽しそうにするAを見つめながらそう思った。